一人静かに内省す

日本男子を中心に体操競技応援中!体操競技について思いのまま綴っています

谷川航選手の体操『平行棒』

f:id:mariyan_4020:20231122002920j:image

今回の記事を起こすにあたって谷川航選手の平行棒の動画を探したが、思った以上に見つからない。全日本種目別選手権では毎回のように決勝に残っているし団体戦でも必ず起用されるほど非常に安定感がある種目なのに何故なのだろうか。現役体操選手の中では多い方だろうし探せばそこそこ見つかるのだが、個人的にこの演技が見たいという動画に限って配信限定だったりNHKでしか放送されなかったり、なんなら映像にすら残ってなかったりする。私の記憶の中に残っているのはそれはそれでいいのだが、彼に限らず素晴らしい演技は後世に残さなければならないと思う。様々な権利関係でこのような状況なのはわかってはいるが、時代が進んでも何ゆえスポーツの映像というのはインターネット上に残すことが難しいのだろうかと昔から疑問だ。

YouTubeで発見された過去の映像から演技構成を踏まえて辿っていく。まずは2015年全日本種目別選手権決勝の演技。

腕で支持する技は9技目の前方開脚5/4宙返り腕支持しかないがサポーターをしている。基本航選手は他の種目でもテーピングやサポーターなしで演技することが多いので少し珍しい印象。今よりも演技価値点は低いが演技構成のベースは今と変わっていない。当時18歳ながら6技目に行っているE難度のバブサーの熟練度に驚く。終末技は屈身ダブル。解説でシャルロについて触れているが未だに見たことがないので、今後何らかの形で目にすることができるといいな。余談だがこの動画を見ると、冨田さんにサポートされる航選手をリアルタイムで追うことができなかった後悔が湧き出てしまう。

次は2018年世界選手権予選の演技。

3技目の棒下ひねり倒立を新たに投入、終末技は今では得意技の一つである前方ダブルハーフにして難度を上げている。安定感が高い。髪が長い。予選とはいえ客入りの少なさに目がいく。

続いて2021年東京オリンピック団体決勝の演技。

3技目のアームツイストを新たに投入して難度を上げている。1技目のホンマの捌きが軽やか。バクダンの後の前振りの処理が大幅に改善されている。注目は終末技。本来ならば前方ダブルハーフを行うはずが、技をかける前に足を上げてゆかのマンナのような状態になる際におそらくいつものように溜めることができず、高さ不足になったことを瞬時に判断し咄嗟にひねるのをやめている。後ろに大きく1歩下がるような着地にはなってしまったが減点を最小限に抑える対応力は見事。転倒していれば銀メダルはまずあり得なかったと思うし、ここで踏ん張ったことが最終種目の鉄棒の成功にうまく繋がったのではと思う。

そして最新の映像、2022年世界選手権団体決勝の演技。

1年前じゃねーか、と思うがなんと2023年の映像が一つも見つからなかった。悲しすぎる。全日本選手権の予選の演技がとても素晴らしかったが映像にすらなっていない。悲しすぎる。

ルール改正によって棒下ひねり倒立の捌きが変更された以外、2021年から演技構成は変わらず。終末技の難度が下がったので何かすらの技を入れて構成を変えるかと思ったが、彼の場合ゆかと鉄棒のルール改正の対応が大変だったからか平行棒については今に至るまで何も変更箇所がない。演技全体の安定感と余裕が心地良い。静かな着地の音が良い。

おまけで個人的にお気に入りの2020年「Friendship and Solidarity Competition (友情と絆の大会)」での演技。

演技構成は従来通り。安定感が光る演技なのは特に他と変わりないが、単にこの試合で着ているユニフォームと髪型が好みなだけである。コロナ禍で声援のない静かな会場で刺さるような終末技の着地の音が響き渡るところもお気に入り。

ホンマの軽やかな実施、バブサーの熟練度、しっかりと足を閉じた前方ダブルハーフ、そして演技全体の余裕度が平行棒の魅力だとこれまで感じていたが、最近になってもう一つ魅力に気付いた。前方開脚5/4宙返り腕支持の捌きである。

この技は一連の動画からもわかるように2015年から一貫して終末技の直前に行っている。演技終盤に行っているにもかかわらず高さのある宙返りを行うことがよく解説から言及されている。もちろんそれは素晴らしいのだが、この技を同じ位置で行っているところが個人的に好み。

バブサーという棒端から棒端へ移動する技があり、E難度ということもあって多くの選手が取り入れているが始めから棒端に位置しているケースを除けば、技の特性上一旦棒端まで移動→バブサー→棒端から中央へ移動という流れにならざるを得ない。バブサーで棒端へ移動したあとはティッペルトで中央へ戻るというのはほぼ全選手に共通する演技の流れだが、バブサー前の棒端への移動は様々で、この前方開脚5/4宙返りで移動する選手が結構多い。日本のトップ選手はほぼこのケースで、宙返りを行った後支柱ギリギリの位置で支持し棒端に移動してバブサーを行うというパターンで、ルール上特に減点もない。ただ個人的な好みの話だが平行棒の技を行う際、技を実施した位置からあまりズレてほしくないという思いがある。たまに移行の際に大きく位置をズラす動きをする選手が見受けられるが個人的に好まない。バブサーやティッペルトのように移動ありきの技を除いて、基本的には技を実施した場所から不必要に移動してほしくない。終末技の前方宙返り系の技で着地位置が技をかけた位置から大きくズレる選手もいるが、あれも個人的に気になる。

実際この捌きが本人にとってこだわりなのか、はたまた只のクセなのか、もしくは本当は他の選手のように移動したいが出来ないだけなのかは分かりかねるが別になんだっていい。体操競技に限らずスポーツはルールを覚えると見るのが楽しくなるが、体操の場合Eスコアを覚え始めるとどういう動きに減点があるかということに着目してしまい、一種の粗探しのような感覚になってしまう。採点は審判が行ってくれるので、点数に直結するかはさておき個人的に好みの捌きを見つけることが競技を楽しむ上での体操ファン的ライフハックだと思っている。

最後に特に意味はないが平行棒と親和性が高い航選手の画像を4枚(厳選)貼っておく。

f:id:mariyan_4020:20231123225110j:imagef:id:mariyan_4020:20231123225123j:imagef:id:mariyan_4020:20231123225130j:imagef:id:mariyan_4020:20231123225136j:image