一人静かに内省す

日本男子を中心に体操競技応援中!体操競技について思いのまま綴っています

パリオリンピック代表候補《東京オリンピック代表編》

いよいよパリオリンピックの代表選考が始まる。以前から何度も述べているが日本男子体操は非常に層が厚く、代表の人数は5人だがその枠にはとてもおさまらない数の選手が代表候補として競い合っている状況である。正直代表選手を15人くらいにしてほしいところだが、5人しかいないからこそ価値があるのだ、改めていうまでもないが。選考会のルールについて、以前に記事にしているので参考まで(パリオリンピックに向けた日本男子体操の代表選手選考ルール - 一人静かに内省す)。

日本男子は団体総合での金メダル獲得を最大の目標としている。選手としては代表に入らなければ金メダルも何もないわけだが、代表に入ることは決してゴールではない。日本は若手急上昇のアメリカを気にしつつ、最大のライバルである中国を上回らなければならない。代表入りのポイントに加え金メダル獲得にも焦点においてパリオリンピックの代表候補選手を紹介する。

たくさんいるので今回は東京オリンピック代表の4選手を紹介。ちなみに東京オリンピックを見て再び体操競技のファンに回帰した経緯があるので、この4人については他の選手に比べてかなり贔屓している。(年齢、所属は2024年4月1日現在のもの)

 

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橋本大輝

写真一番左の選手で3月に順天堂大学を卒業し、春からセントラルスポーツ所属となった22歳。橋本選手は昨年の世界選手権の個人総合で金メダルを獲得した実績を踏まえてすでに代表が内定している唯一の選手だが一応紹介。東京オリンピック団体総合の表彰式での写真をチョイスしたのだがあまりにも顔つきが変わってしまっていて驚いた。この3年弱で最も成長した選手だと思う。

すでに代表に内定しているが、これまでどおり選考会には出場すると思われる。この2年間の選考会でベストな演技構成を行なったのは2022年の全日本選手権決勝のみだが、ベストな演技構成を行わなくても結果優勝しているので他の選手より頭2つくらい抜けている実力を持つ。他の代表メンバーが決まっていない以上、団体金メダル獲得には彼がベストの演技を行うことが現時点での最低条件になるといえる。世界選手権と違いオリンピックは選考会からあまり日がないので、オリンピック本番に向けてかなり仕上げてくると予想。どの程度Dスコアを上げてくるかが最大の注目で、注目種目は全種目。怪我なくベストな演技を行なってオリンピックに向けて弾みになることを願う。

 

萱和磨

写真左から2番目の選手で、セントラルスポーツ所属の27歳。東京オリンピックでは団体のキャプテンを務め、前年の世界選手権でもキャプテンを担い団体金メダルに大きく貢献。「失敗しない男」と称されているが、マスメディアお得意の誇張したキャッチコピーではなく本当に失敗しない。間違いなく世界で最も安定感のある選手。

正直萱選手の経験値・安定感・キャプテンシーは日本に絶対に必要なので橋本選手と同じく内定が出てほしいまであったが、体操競技は内定が出ることは稀で、選考会での結果を重んじる傾向にあるのでそう簡単に内定は出ない。そして昨年の世界選手権で予選2位でありながら個人総合決勝に出場できないという、他にない悔しさを抱えているのが最大のモチベーションになっているのでは。

萱選手はあん馬を得意としているが爆発的なスコアを出すわけではなく、6種目14点以上を確実に稼ぐ個人総合に長けた選手である。選考ルールでは個人総合枠2名と貢献度枠2名を代表とするが、6種目の安定感が最大の武器である萱選手の場合は貢献度での代表入りとなると途端に難しくなってしまうので、是が非でもNHK杯で上位2名に入ることが絶対条件となるといえる。

注目種目は跳馬跳馬で中々点が伸びない傾向にあったが、昨年の世界選手権団体決勝で素晴らしい演技を披露しEスコア9点台を出したので、それができればかなり代表にかなり近くなるのではと予想。

繰り返すが萱選手は絶対に日本代表に必要な選手だ。必ず上位2名に入り代表になる姿を見せてほしい。

 

北園丈琉

写真右から2番目の選手で、徳洲会体操クラブ所属の21歳。東京オリンピックでは選考会で負った怪我を抱えながらも、最年少として団体銀メダルに大きく貢献した選手。しかしこの2年間、世界選手権の代表になるどころか代表の候補にすらあがることはなかった。東京オリンピックメンバーの中で唯一拠点が変わった選手で、高校の練習内容からいきなり社会人の練習内容となり、その上ルール改正、怪我の療養といった課題を最も多く抱えていた選手といえるので致し方ない面もあった。国内の選考会では中々本来の実力を発揮できずにいたが、昨年のアジア大会の個人総合で87点台を出すなど、復活の兆しを見せている。

代表メンバーは選考会の結果から選ばれるのだが、個人競技である体操競技の選手同士の相性等は当然度外視である。演技そのものとはあまり関係ない点ではあるが、男性だけで構成される団体メンバーの中で選手同士の年齢、所属先や出身校が関係性に影響しないわけがない。東京オリンピックアジア大会を見て感じたのが、北園選手の皆から愛される憎めないキャラクターは集団の中でバランスをとる要素があると思っているので、そういった点も含めて代表に入ってほしい選手の一人である。

注目種目は跳馬東京オリンピック以降ずっと苦戦している種目だが、アジア大会以降安定感も高くなっているので、14点台後半を狙えると理想。ここ最近平行棒で15点台に乗ることが多くなったことと、鉄棒で14点台半ば〜後半を出せれば日本としては大きな強みになる。北園選手も貢献度枠での代表入りは少し難しいので上位2名に入ることが望ましい。6種目大きなミスさえなければ橋本選手に次ぐ実力だと思うので、オリンピック代表のプライドを見せてほしい。

 

谷川航

写真一番右の選手で、セントラルスポーツ所属の27歳。私の推し。2022年の世界選手権代表選手で、団体銀メダルに加えて個人総合で銅メダルも獲得している。2017年以降毎年A代表(オリンピック・世界選手権の代表)だったが昨年7年ぶりの代表落ちとなった。毎年代表に入っていたこと、そして個人総合のメダリストになったにも関わらず代表にすら入れなかったことで相当悔しい思いを抱えていたのでは。世界選手権のメンバーにはなれなかったが、アジア大会の代表に選出されキャプテンとして臨み、予選を兼ねた団体戦では出場した5種目全てでベストな演技を魅せ、団体戦においての強さと頼もしさを改めて感じられた。

個人総合に強い選手ではあるが、萱選手・北園選手と比べると種目ごとの波が大きい選手。上位2名に入らなくても貢献度枠での代表入りの可能性が高いので、選考会では得意種目でいかに得点を稼ぐかが最大のポイントになるといえる。

注目種目はつり輪・跳馬・平行棒。日本が最も苦手としているつり輪で確実に14点台が出せることは日本としては大きな強みになる。そして跳馬ではおそらく最高難度のリ・セグァン2に挑んでくると思うが、団体戦において毎回キーとなる跳馬で15点台を出せるのは、ライバル中国にはない武器になる。それとこれは個人的な予想に過ぎないが平行棒で難度を上げてくるのではと思っている。根拠は特にない。貢献度を稼ぐという意味と、橋本選手や萱選手を上回る得点を取れればこの2選手の負担を減らす効果も出てくる。

日本の苦手種目を補い、ここぞというときに確実に決めてくる強さは日本随一だと思っている。本人が一番の目標としている楽しい体操で最良の結果を期待したい。

 

何よりこのメンバーはわずか0.103の差で金メダルを逃すという経験をしているので、日本の選手の中でも代表に入ること以上に金メダルを取ることに目が向いていると感じられる。そしてオリンピックに出場した選手はオリンピックの選考会こそ強いし、オリンピックの悔しさはオリンピックでしか晴らせないと強く感じているに違いない。4人ともが最大の力を発揮できることを願う。