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パリオリンピック代表候補《世界選手権代表編》

前回に続いてパリオリンピック代表候補について紹介。今回は2022・2023年に行われた世界選手権の代表選手について紹介する。(年齢、所属は2024年4月1日現在のもの)

 

まずは2022年にリバプールで行われた世界選手権の代表3選手。

 

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神本雄也

写真左の選手で、コナミスポーツ所属の29歳。リオオリンピックでは候補選手(補欠)に選ばれており、2019年と2022年の世界選手権に出場している。2022年の選考会では個人総合で代表を勝ち取り、世界選手権では得意種目であるつり輪、平行棒、鉄棒の3種目で種目別決勝に進んだ実力を持っている。

神本選手は昨年の選考会終了後に手術を行なっており、以来現在まで試合には出場していない。本人のSNSで演技を紹介する投稿はあったが現状どの程度まで演技を戻せているかは不明である。そういう事情も踏まえて、一番の注目点は体力面。今回の選考会は4月の全日本選手権と5月のNHK杯の両方で個人総合を2試合ずつ行うが、29歳且つ術後初めての試合で体力をどこまで保てるかが焦点になると思われる。全日本選手権は6種目行なってくると思うが、苦手種目は極力抑えて得意種目の3種目でいかに稼ぐかが鍵になると予想。この3種目を得意としている選手は日本にはおらず、中でも日本が苦手としているつり輪で稼げることは選考上比較的有利だし、且つ鉄棒も強いのが他の選手にない特徴といえる。

全日本予選の結果次第でそれ以降の試合にどう臨むかが変わってきそうだが、場合によっては種目を絞って戦うことも大いに予想できる。高い経験値ゆえの試合への戦略があると思うのでそのあたりを注目したい。

 

土井陵輔

写真中央の選手で、この春からセントラルスポーツ所属の22歳。2022年の選考会は個人総合で代表入りし、世界選手権初出場ながら団体銀メダルに加えて種目別ゆかで銅メダルも獲得している。

土井選手の最大のポイントは練習環境が変わったことである。昨年度まで日本体育大学に在籍しており、卒業後も拠点をそのままにする形も無くは無かったかと思うが、結果的に順天堂大学を拠点とするセントラルスポーツに進むこととなった。同期の橋本選手を含め多くの日本代表選手と練習を共にできるというメリットはあるが、練習拠点だけでなく指導者、生活拠点も変更したことはディスアドバンテージになると考えられる。果たしてそれがどう影響するか。

ゆかで大きく点を取れる選手で、あん馬と鉄棒でも高得点が取れる。丁寧で美しい体操を行う選手で、どちらかというとEスコアで稼ぐタイプだが最近はDスコアを上げている姿が目に留まる。ゆかで大きく点が稼げるのが一番の武器で、跳馬も昨年夏頃からDスコア5.6の跳躍になっており、跳馬で14点台後半が取れると代表に近づける上、日本としても大きな戦力となる。あん馬と鉄棒の美しい演技が大好きなので個人的に注目度が高い選手の一人。

 

谷川翔

写真右の選手で、セントラルスポーツ所属の25歳。2022年の世界選手権は2019年以来2度目の出場となった。東京オリンピックの有力な代表候補の一人であったと思うが、直前に怪我を負ったことが影響し代表には選ばれなかった。新型コロナでオリンピック開催が1年延期したことが悪い方に向いてしまった選手で、それゆえの悔しさが滲み出る発言が時々見受けられる。

注目種目はあん馬。2022年の選考会では主にあん馬の貢献度で代表入りしたが、世界選手権の団体決勝では大きなミスを出してしまった苦い経験がある。昨年のアジア大会団体戦でもミスをしており、得意種目だが一番の課題でもある種目。年始の報道であん馬と平行棒に注力する発言があったので、この2種目で大きく点を取ってくると予想される。あん馬は元々高いDスコアを持っているが、平行棒はそこまで突出して高いDスコアを持っているわけではないので、どういった演技構成で挑んでくるか注目したい。

選考会では毎度ながらその種目の性質からあん馬がキーとなる。納得の演技を実施してこれまでの悔しさを晴らしてほしい。

 

 

続いて2023年にアントワープで行われた世界選手権代表の4選手。

 

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三輪哲平

写真左上の選手で、セントラルスポーツ所属の23歳。昨年の選考会では個人総合で代表入りしたものの、現地で怪我をしたことで世界選手権は直前に交代することとなってしまった。そのまま控えの選手として帯同し、目の前で他の代表選手が金メダルを獲得する場面に直面したという点で、おそらく全選手の中で最も悔しい経験をした選手。

跳馬、平行棒、鉄棒を得意としている選手で、中でも跳馬はトップ選手の中で一番の安定感を持つ。高いDスコアだけでなく、美しい姿勢と抜群の跳躍の高さによって確実に14.8点以上を出せる強さがある。平行棒と鉄棒も得意としているが、この2種目を得意としている選手は多く、突出した得点を出せるわけではないので、個人総合枠での代表入りが必要になると思われる。昨年の全日本選手権ではDスコアをかなり落としており、翌月のNHK杯ではDスコアを上げて臨むという戦い方だったが、今年の選考会ではどう臨んでくるか。

世界選手権での悔しさを隠しきれない表情が未だ頭に残るが、その悔しさを力に変えてどこまで安定感を高められるかが鍵になると思われる。

 

千葉健太

写真右上の選手で、セントラルスポーツ所属の27歳。昨年の世界選手権は27歳で初めて代表入りし、初出場ながら個人総合の予選を1位で通過するなど、持ち前の美しさを武器に強さを見せつけた。

世界選手権では収穫と課題がわかりやすく表れた選手だが、この経験が選考会にどう反映されるが見どころ。今回挙げた選手の中で最も波が大きい選手で、ハマれば代表選出レベルだしハマらないと予選落ちもあり得るほど読みづらいタイプ。

注目種目はつり輪とあん馬。日本が苦手としているつり輪を得意種目としており国内では高得点が出ていたが、国際大会ではなぜか同じような結果には至らなかった。それ以降、肩の痛みの影響もあってか現在までつり輪の演技を披露する機会はなかったため現状がどうなのかは不明。技の構成によるところもあると思うので、そのままやってくるか、難度を落としてくるか、はたまた別の技に変更するか。あん馬では高得点を出せる実力があるがDスコアがそこまで高いとはいえないので、団体での戦力も加味して重点的に上げてくる可能性もあるのでこちらも注目したい。

 

杉本海誉斗

写真左下の選手で、相好体操クラブ所属の24歳。昨年の世界選手権は当初候補選手だったが、三輪選手の怪我により直前に交代となり団体メンバーとして出場した。金メダル獲得に大きく貢献し、種目別平行棒では銅メダルを獲得した。

世界選手権のさなか、内村航平氏から大学の後輩であるがゆえの独特のプレッシャーを個別に与えられていた印象を受けたが、それを跳ね除けて結果を出す強心臓ぶり。昨シーズンはミスというミスをほとんど見たことがなかったので、安定感という点では萱選手と双璧をなす。

得意種目の平行棒は高得点が出るが、それ以外の種目はDスコアがあまり高くないこともあり、大きな得点源は見込めないイメージ。団体戦においては他のメンバーとの出場種目のバランスを踏まえて平行棒以外にもう1つ得点源となる種目があるとベスト。個人的にはつり輪か鉄棒に期待しているのだが、どう挑んでくるか。

 

南一輝

写真右下の選手で、エムズスポーツクラブ所属の24歳。2021年にゆかで世界選手権の代表経験があったが、昨年は団体メンバーとして出場。団体金メダルのほか種目別ゆかで銀メダルを獲得した。

ゆかのスペシャリストで、東京オリンピック後あたりから跳馬にも注力しており、Dスコア5.6の技を安定して跳べる選手。ゆかについては実力が飛び抜け過ぎているので他を圧倒すると思うが、強いて言えば世界選手権で中々伸びなかったEスコアが課題か。

ゆか、跳馬以外では点を稼げないので、攻め一辺倒になると予想。ゆかは圧倒的なのだが、跳馬についてはD5.6を跳べる個人総合の選手はそこそこいるので、個人総合枠が跳馬が得意な選手になると貢献度を稼ぐのが難しくなるのが一番不利な点。スペシャリストゆえに他力本願にならざるを得ないが、個人総合の選手よりも戦略が限られる点は有利ともいえる。

 

世界での評価のされ方が把握できているので、演技構成や戦略の方向性が明確なことが最大のアドバンテージ。神本選手・土井選手以外は冬に行われたワールドカップシリーズの出場によって試合経験を積んでいることも有利な点のひとつ。世界大会での経験はプレッシャーにつながることもあるが、それ以上に本人の自信になるケースの方が多い印象を受けるので、世界で戦ったプライドと自信を見せつける演技を期待したい。