一人静かに内省す

日本男子を中心に体操競技応援中!体操競技について思いのまま綴っています

パリオリンピック選考会の展望《橋本大輝選手の棄権による影響》

橋本大輝選手がNHK杯を棄権することが発表された。
大変残念だが、それ以上に怪我の具合がとても心配だ。軽傷であることを願う。

 

この2年半、怪我や不調に悩まされることも少なくなく、時には悔しい試合もありましたが最後には必ず強い姿を私たちに見せてくれました。きっと橋本選手ならこれまで以上に強い姿をパリで見せてくれるはずです。橋本選手の力を信じています。

 

橋本選手はすでに代表に内定しているので問題ないが、他の代表選考には若干影響が出る。

まずNHK杯2日目出場者が橋本選手+上位17名から上位18名に変更。そして貢献度枠Aは上位10位以内だが、橋本選手が首位でNHK杯を終える可能性が高かったこともあり、実質橋本選手+個人総合枠の2名を除いた残り7名とされていたが、個人総合枠の2名を除いた残り8名から選出される。

そして貢献度枠計算の橋本選手のスコアが確定した。全日本選手権の予選・決勝の2試合のみの出場なので代表選考ルールに基づいて、2試合中のベストスコア、つまり全日本選手権の予選・決勝のうち高い得点が採用される。

以下の得点が橋本選手の貢献度枠計算のスコアだ。

ゆか   15.000
あん馬  15.133
つり輪  14.166
跳馬   15.100
平行棒  14.833
鉄棒   15.100

すべて参考スコアを上回り、橋本選手本来の実力に見合った得点になった。

ゆか・あん馬跳馬・鉄棒がターゲットスコアになる可能性は限りなくゼロに近いが、つり輪、平行棒はターゲットスコアになる可能性がある。ただ以前の記事でも話したように、橋本選手より他の個人総合枠がどの選手になるかの方が重要だ。

 

橋本選手が棄権したとて選手のやることは変わらないと思うが、点数や順位云々よりイレギュラーが発生したことによる別の影響が心配だ。
メディアの注目、大会のタイトル、最後を締める演技等々…精神的な面で少なからず影響が出る選手は必ずいると思われる。事前取材で仰っていた内村航平さんの「普通にやれる選手が勝つ」という言葉がより一層重く響いてくる。

 

女子の試合は1日目とはいえ、全日本以上の緊張感を強く感じた。男子もおそらく同じでしょう。

選手全員、怪我なく悔いのない戦いができることを祈っています。

パリオリンピック選考会の展望《貢献度枠編》

前回に引き続き全日本選手権の結果を受けて選考会の展望を考える。今回は貢献度枠について。(良かったら過去に起こした代表選考ルールについての記事日本体操協会が公表している代表選考方法を一読してください。)

個人総合編でも話したように日本代表は個人総合枠と貢献度枠に大別されるが、個人総合枠は最終順位が条件になるのに対し、貢献度枠は多少順位も加味されるが基本的には対象の4試合で出した得点がダイレクトに反映される。対象の4試合のうち得点の高い3試合の得点の平均値から貢献点が高い選手が選ばれるが、NHK杯進出者のスコアを一通り確認して感じたことがこれだ。

 

 

 

 

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さっぱりわからない。

湯川先生の台詞を拝借したが、正直これに尽きる。

 

 

昨年の選考会同様残り2試合で決定する、という点で相違はないが、昨年までは個人総合枠の代表選手が先に決まっておりターゲットスコアが出ていたのだが、今回はそのどちらも不確定な状態だ。今回の選考ルールが公表された時点で想定できたことではあるが、いざリザルトを広げてみたらまあ、わからない。しかし現時点で確定していることが二つある。

①橋本大輝選手が代表に内定していること

全日本選手権の2試合のうち高い方のスコアは貢献度枠計算の対象になること

以上だ。この確定要素二つを引っ提げて6種目を一つずつ見ていく。敬称略。

現時点で全日本選手権の予選と決勝のスコアしか頼りになるものがないので、この2試合(1日目と2日目)のそれぞれの得点とその平均値、そしてそのうち貢献度計算の対象となる高い方の得点を並べてみた。橋本については参考スコアも並べている。順位は全日本選手権の順位で、「種」は種目別枠の選手。

個人総合枠の選手は決まっていないが、内定している橋本以外は現状2位の岡、3位の萱を基準にせざるを得ない。ただ前回の記事でも書いたように4位の杉野、5位の土井も個人総合枠に入る可能性は十分あるので、その2名も含めて大体のターゲットスコアを見定めていく。

 

 

ゆか

まず橋本と個人総合枠候補(仮)の4名の点数がこちら。

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貢献度枠は2人なので、橋本を含めた個人総合枠の3人のうち一番低いスコア、もしくは下から2番目のスコアの得点を超えることができれば貢献点を稼ぐことができる。例えば上位3人のゆかで比較した場合は岡の14.517、萱の13.783がその対象となる。岡の14.517はかなり高いスコアなので貢献点を稼ぐのは非常に難しい。そうなるとターゲットスコアは萱の13.783となる。ただ萱は1日目に中過失を出して平均値を下げているので、実際のターゲットスコアはもう少し上がる可能性が高い。

土井は本来もう少し点を出せる力があるが、足の怪我の影響で全日本選手権は点が伸びず、14.200が得点に加算されることが確定している。ただNHK杯で大きく伸ばしてくる可能性が高いため、ちょっとこの辺は読めない。

続いて他の選手を含めた平均値と高い方のスコアの一覧(各得点が高い順)がこちら。

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まるで萱が下位に位置しているように見えるが、よく見ると点差はあまりない。現行ルールでゆかは高得点をとるのが難しく、どの選手も似たようなDスコアで争っている。結果的にEスコア勝負になりつつあり、Eスコアは生き物なのでその日の選手の状態や試合環境によるところがある。要するにゆかで貢献度を大きく稼ぐこと自体そもそも難しいのだ。なので青木と松見が比較的高いスコアを出しているが、他の種目に比べると貢献点はどうしても低くなる。注目はやはり土井で、現在の得点からどこまで伸ばしてくるかが大きなポイントになってくる。

ゆかに関していえることは、ゆか単体で貢献度を稼ぐのは難しいので少しでもEスコアの減点を減らして0.1を拾うことだ。この細かい0.1が後々必ず効いてくる。

 

あん馬

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橋本の参考スコアが本人の本来出せる得点より低いのでどう影響するか少し心配していたが、高得点を連発したことで大きく上回ったので杞憂になりそう。岡が2日目に落下しており大きく平均点を落としているのでターゲットスコアが読みづらい。土井のスコアも加味すると14.3あたりになるだろうか。

そして他の選手のスコアはこちら。

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個人総合上位のメンツを見て予想できてはいたが、あん馬のターゲットスコアはかなり高く、貢献点を稼ぐのがかなり難しい。昨年と一昨年の選考会では個人総合枠にあん馬を苦手としている選手が入っていたので、毎回あん馬が得意な選手が有利になっていた。ところが今回は見事にあん馬が得意な選手が並んでしまったため、実質あん馬だけで貢献度を稼ぐのは難しくなりそうだ。津村が高得点を出しているがあん馬以外でほとんど貢献点を稼げていないので、かなり厳しい立場となっている。その他上位の選手についても同じ印象で、仮に個人総合枠に萱と杉野が入れば、貢献度枠が入り込む隙がかなり狭くなると思われる。

ただ種目の特性上ミスが起きやすい種目ということもあり、波乱が起きる可能性もある。現状いえることとしては、あん馬に関してもゆか同様0.1を少しでも拾うことが大事で、あん馬一本ではなく他の種目でも貢献点を稼ぐことが必須になる。

 

つり輪

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上位3人で照らし合わせると、岡と萱はつり輪が得意なのでターゲットスコアが橋本になっている。橋本は現時点で参考スコアを上回っており、つり輪はミスが出にくい種目なので14.1前後がターゲットスコアになるかと思われる。ただ杉野もしくは土井が入ってくると一気に下振れし、1点ほど点数が落ちる計算になる。誰が個人総合枠になるかで一気に局面が変わる種目だ。

そして他の選手のスコアがこちら。

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繰り返すがつり輪はミスが出にくい種目なので、おそらく同じようなスコアかもしくはもう少し高いスコアでNHK杯も展開されると思われる。注目は金田。個人総合枠としてNHK杯に出場するが、つり輪で最も高いスコアをとっている現状において、最も貢献点を稼いでいる。種目別枠の選手も高いスコアを出しているが、金田はゆかでも点数を稼いでいる以上、最低でも金田を上回らなければならないのでかなり厳しい立ち位置といえる。

そして谷川航、春木、上山がそれに次ぐスコアで得点を稼いでいる。この3人は後述する跳馬でも貢献点を稼いでいるので、拮抗する間柄になっている。

杉野か土井が入ってくれば一気に稼げることを踏まえると、やはりつり輪が得意な選手は今回も比較的有利になっている。Eスコアが劇的に伸びる種目ではないので着地が勝負の決め手になってくると思われる。杉野、土井が入ってくる可能性も考えると、全体の順位が下位であっても少しでも得点を稼ぐことが重要だといえる。

 

跳馬

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橋本の参考スコアが着ピタした去年の世界選手権個人総合決勝のスコアになっており、こんな得点そうそう出ないだろうと思っていたがしっかり捉えている。凄い。

一方、岡と萱は跳馬であまり点が取れていない。岡はD5.2の跳躍なのと、萱は跳馬だけは少し波がある。二人とも14.1〜3あたりがターゲットスコアになりそうで、現状跳馬が最も貢献点を稼ぎやすい種目といえる。ただ杉野、土井はD5.6をしっかり成功させているので、この二人が入ってくると少し点数が稼ぎにくくなる。

そして他の選手のスコアがこちら。

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少々驚いたが、種目別枠の選手がいずれも高得点を稼いでおり上位に位置している。岡と萱は6種目高いレベルにあるので、突出した高得点を出せる種目を持っている選手が有利になりそうなのだが、その中でも跳馬はかなり有利に働く可能性がある。種目別枠の選手全員が高得点を出しており、その中で最も点を稼いでいるのが岩澤。 ただあと2試合あるので種目別枠の他の選手も十分チャンスはある。

そして跳馬は現状2名の枠がある状態なのでもう1名跳馬で貢献点を稼ぐとなると、個人総合上位の三輪が同様に高得点を出しており、三輪はさらにゆか、つり輪、平行棒でも上乗せできる可能性があるので有利なポジションだ。

高い得点の表の春木より上の選手がD5.6の跳躍を安定して跳んでおり、貢献度を稼げる選手といえる。注目は上山と谷川航。上山はD6.0のヨネクラを成功させれば一気に点を稼いでくる可能性がある。そして谷川航は膝の怪我の影響で若干出遅れているが、今まで重要な局面で何度もD6.0のリセグァン2を決めてきた経験があるので、こちらも一気に高得点を稼ぐ可能性がある。個人的には無理をしてほしくはない思いがある一方、オリンピックが絡めば選手は信じられない力を出すし、絶対に決めなければならない場面での谷川航の跳馬は誰よりも強いとも感じている。

杉野や土井が個人総合枠になっても貢献点は稼げる余地が少しあるので、注目度の高い種目のひとつといえる。

 

平行棒

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上位3人でいえば岡の平均点が一番低いが、1日目で器具上落下したことが起因している。本来であれば3人の中で最も高い得点を出せる選手なので、NHK杯でもっと得点が上がる可能性が高い。なのでターゲットスコアは橋本・萱の14.8〜9くらいになると予想。仮に土井が入ってくれば土井のスコアがターゲットになって若干下がるだろうし、杉野が入ってくるともっと下がることになり、少し読みづらい種目だ。

そして他の選手のスコアがこちら。

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平行棒は3人とも得意種目なので貢献点はかなり稼ぎにくい。現状貢献度を稼げているのが田中、三輪、谷川航と非常に狭き門且つ貢献点はかなり小さい。ただ前述したように杉野が入ってくると一気に多くの選手が貢献点を稼げる計算にはなるが、平行棒単体で貢献度を狙っている選手はほぼおらず、複数種目での貢献度稼ぎになる。前述した3人は他の種目でも貢献点をかなり稼げそうなので、実質この3人がどれだけ点を積めるかが焦点になりそう。それ以外の選手も含め、ゆか同様少しでも0.1を拾うことが重要だ。

 

鉄棒

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橋本が2日目にミスを出したので平均値が若干低いが参考スコアがあるので一旦スルー。そして岡も2日目にミスが出たことで平均値を落としている。ただ元々高いスコアを出せる選手なので、NHK杯では上がる可能性がある。ターゲットスコアはおそらく萱の14点。杉野と土井も高い得点を出しているので、萱が個人総合枠に入るかどうかで局面が変わる。

そして他の選手のスコアがこちら。

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上位全員レベルが高いため貢献点を稼ぐのは結構難しい。というか萱をボーダーに二極化している印象。田中と杉野が15点前後を出しているので、個人総合枠が萱になると一気に貢献点を稼げる計算になる。また、土井は決勝でミスしていることで平均値が下がっているが、高い得点を出せる力はあるので同じように貢献点を稼げる。川上も高い得点を出しているが、前述した3人より下回っており、他の種目の貢献点も踏まえると貢献度枠としては少し厳しい立場となっている。

鉄棒は最終種目で、種目の特性上ミスが起きやすい種目な上、上位選手の得点が貢献度に大きく影響すると思われる。これまでオリンピック選考会の鉄棒では何かと波乱が起きやすく、最後の最後まで展開が読めないことが多いため最も注目したい種目だ。おそらく橋本がトリを務めることになると思うので、NHK杯1日目を2位で通過した選手の鉄棒のスコアが出た時点で代表が決まることになると思う。

 

 

現状の全体的な印象としては複数種目で貢献度を稼ぐ選手、一つの種目で貢献度を稼ぐ選手に大別されている。種目の特性、個人総合上位選手の得意種目、貢献度を稼ぎやすい種目を加味すると、現時点で貢献度を稼げる選手はある程度絞られる。ただ結局のところ個人総合枠が誰になるか、その2名がどういったスコアを出すか、さらには10位以内に誰が入ってくるかで一気に戦況が変化することは間違いない。

岡は個人総合力は非常に高いがまだ波があるのが否めず、得意種目でミスが出れば貢献点に大きく影響する。萱は個人総合枠に入る可能性が高く安定感もかなり高いが、ターゲットスコアになりそうな種目が多く、わずかな点数の差で貢献点に影響が出る可能性が高い。杉野は個人総合枠に入ってくると先の2名に比べて一気に下振れする種目が出てくるし、土井も岡同様、得意種目のスコアの出方が読めない。

そして貢献度枠で有利になりそうな田中、三輪が10位以内をキープできるか、現状11位以下で貢献点を多く稼ぎそうな選手が10位以内に入ってくるかどうかも焦点になる。

 

とどのつまり、

 

 

 

 

 

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さっぱりわからない。

 

貢献度枠は本人の持ち前の実力、安定感や爆発力に加え「運」という要素も関わってくるため、個人総合枠以上に予想が大変難しい。ただどの選手にもいえることは得意種目で確実に点を稼ぎ、それ以外の種目でも可能な限り0.1を拾う、つまりミスを最小限に抑えることだ。選考会が始まる前からずっと言い続けていることだが、結局ここに帰結する。

それとNHK杯2日目は間違いなくカオスになること必至で、2位の選手の鉄棒のスコアが出た途端、代表争いの計算が確定して現場はざわつくであろう。ただ最後の演技を務めるであろう橋本大輝選手の鉄棒の演技は、体操ファンとしてしっかりと見届けたい。

(ちなみにガリレオシリーズは映画しか見たことがありません。)

パリオリンピック選考会の展望《個人総合順位編》

⚠︎当記事は漫画:寄生獣のネタバレをしています

 

全日本選手権が終わり、パリオリンピック選考会も残すところあと1大会、2試合となり佳境を迎えている。インカレ、シニア、高校選抜等の1次予選を潜り抜けた103名の選手が2次予選の全日本選手権に駒を進め、その結果を踏まえ63名の選手が最終予選のNHK杯に出場する。

先日行われた全日本選手権の結果は波乱だった。東京オリンピック後に行われた二度の世界選手権の代表に選ばれた選手のうち、すでに半数が事実上落選の立場に置かれている。ある程度予想がつかない結果になることは想定していたが、想像以上の結果に打ちひしがれてしまい、予選の順位が発表されてしばらく呆然としてしまった。

そしてこの2試合の得点と代表選考ルールを照らし合わせると、思った以上に多くの選手に可能性があることもわかった。日本男子は層が厚いとは思っていたが、こちらも想定以上の結果となって驚いた。

パリオリンピックの代表選考の対象試合は全日本選手権の2試合とNHK杯の2試合の計4試合だ。冒頭に佳境と綴ったが、正直なところ2/4試合ではまだ見えてこないことの方が多い。実際に様相がはっきり見えてくるのはNHK杯1日目終了後か、あるいは2日目の最中かもしれない。それくらい読めない部分が多い。とはいえNHK杯1日目の翌日は女子の試合があるし、2日目なんて試合を見るだけで精一杯なのが必至だ。試合と同時進行で代表得点の計算をする猛者もいると思うが、私にとっては現時点の情報で整理せざるを得ない。

というわけでタイミングとしては早いが、全日本選手権の結果が出揃ってNHK杯まで少し時間があるので、現時点で出ている情報をまとめて代表選考の展望を考えてみる。代表選手は個人総合枠と貢献度枠に大きく分かれており、今回は個人総合枠を中心に代表決定の重要な基準となる個人総合の順位について。敬称略。(良かったら過去に起こした代表選考ルールについての記事日本体操協会が公表している代表選考方法を一読してください。)

 

 

個人総合順位

すでに代表に内定している橋本大輝を除いて残りの代表枠は4名で、そのうち2名は橋本を除くNHK杯の個人総合上位2名がそのまま代表に内定する。NHK杯の順位は全日本選手権の2試合の得点も加算されるため、全日本選手権での点数が大きく影響する。

そしてその結果がこちら。(日本体操協会公式サイトのリザルトより)

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橋本の得点が際立っているのが目立つ。仕上げてくるだろうなとは思っていたが想像を超えた得点を叩き出し、他を圧倒している。内定選手として当然の如く首位に位置していて大変素晴らしいが、このリザルトは橋本との点差を表記しているため、他の選手の点差を比べるには少しわかりづらい。というわけで橋本以外の各人の点差を表した表がこちら。

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層の厚い日本男子、点差は大小あるものの特別大きいものは見受けられない。体操競技大過失の失点は1点で、着地の一歩で0.1から0.3。どの選手もその日の出来次第でひっくり返るような点差だ。

そして思い起こすこと1年前、NHK杯で大きな猛追があった。こちらがそのリザルト。

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上の画像が全日本選手権の予選リザルト、そして下がNHK杯のリザルト。全日本選手権予選終了時点で3.368開いていた三輪と千葉の点差がNHK杯で0.067まで縮んだ。2試合でこれだけ点差が縮まり、代表選考にも影響を与えた。上位選手のミスが点差を縮めたことに繋がったわけだが、2試合あれば3点以上の点差がひっくり返ることが現実としてあり得るということだ。

そしてここからは実際に代表選考のボーダーラインとなる順位との比較をしていく。

 

3位(個人総合枠決定ライン)

厳密にいうと橋本を除く上位2名だが、橋本と2位以下の点差、橋本本人の実力を踏まえると最終順位が1位になる可能性が非常に高い。なので以降橋本は1位で通過する前提とする。

NHK2日目終了時点で3位以内であれば自動的に代表内定となるので、代表選考会において最も重要な基準が3位である。全日本選手権終了時点で3位である萱との差がこちら。

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先に説明した逆転可能な点差を踏まえると12位くらいまでは可能性がある、と言いたいところだが私もここまで体操競技の試合を見てきた経験がある。とある先人が「体操競技にラッキーパンチはない」と話していたように、上位陣は事前にあらかた予想したメンツが顔を揃えており、いずれもそう簡単に逆転を許しそうにない面々だ。

まず2位は岡。2日間とも86点を超える高スコアを出しているが、予選と決勝それぞれでミスをしている。裏を返せばミスをしてもこれだけの得点を出せる力を持っているともいえる。2日目はあん馬で落下、鉄棒で振り戻しになるミスがあったが、いずれもミスをした技をやり直してDスコアを確保しており、ミスを最小限に抑えたことでこの順位をキープした。ミスをしても消極的にならない試合運びはとても素晴らしかったが、波があるのは否めず、4位以下の点差もさほど大きくないので油断はできないポジション。

そして3位は萱が位置しており、1日目も2日目も85点後半の得点を出している。1日目のゆか、2日目の跳馬で中過失程度のミスを出した程度で、大きなミスを出すことなく2日間を通し、さすがの安定感を遺憾なく発揮してきた。おそらくNHK杯もこのくらいの得点を出す可能性は十分あるため、実質的なターゲットスコアになると思われる。

4位の杉野は1日目のあん馬でミスがあったが、2日目は大きなミスなく通して86点を超えている。5位の土井は2日目の鉄棒でミスが出ており、得意のゆかは両日で細かい取りこぼしがあった。この2名の点差と持ち前の実力を考えると逆転は十分可能といえる。

6位は田中佑典。選考会ということを一旦置いておいて、年齢の話をするのはあまり好きではないが、さすがに34歳でこの位置にいるのが本気で意味がわからない。予選決勝ともにミスなく、得意種目では十分に力を発揮する姿が非常に印象的だった。年々磨きがかかったような演技を披露しているが、ここまで大きく代表争いに食い込んでくるとは予想しておらず、個人的には嬉しい誤算だ。ただミスがないという点において萱との点差が1.832というのは少し大きいと思うので逆転は難しいポジションといえる。

そして7位松見、8位三輪、9位川上と例年の上位常連が並ぶが、この辺りの点差と萱の安定感を考えると少し難しい位置に思える。ただ三輪は前年のリザルトを見てもわかるように86点を超える点数を出す力があるので、ミスを最小限に抑えれば不可能ではないと考えられる。

つまりこの個人総合枠の争いは、岡、萱、杉野、土井が中心になると予想する。そこに三輪がどこまで食らいつけるかが注目。ちなみにこの5名は貢献度枠でも代表の可能性が高い且つ大きな影響が出そうなので、代表争いの中心になると思われる。

 

10位(貢献度選出者Aの条件ライン)

貢献度枠は2枠あるが、そのうち1枠はNHK杯終了時点で10位以内という条件がある。それを踏まえて全日本選手権終了時点で10位である長谷川との点差はこちら。

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点差的には3〜19位くらいの選手がターゲットになるが、上位選手と下位選手の持ち前の実力、ミスの回数を踏まえるとここに入ってくる選手はもう少し限られると思われる。10位以内に入ったとて貢献点を稼いでいなければ代表には遠くなるのだが、このラインをクリアすれば確実に4枠目の条件をクリアするので、種目別枠以外の選手は目指したい位置。貢献点が稼げそうな選手は全日本選手権2試合の得点でわりと見えているところもあるので、その選手らがここに入ってくるかどうかで代表選考の行方が大きく変わってくる。

 

18位(NHK杯2日目進出ライン)

ここが結構重要なライン。NHK杯1日目終了時点で18位以内に入ることが2日目進出の条件だ。そして前述の3位と10位はNHK杯2日目終了時点の順位だが、この18位は1日目終了時点の順位なので1試合の点数で決まる。19位以下になってももう一つの貢献度枠は狙えるが、種目別枠の選手含めわずか3名しか2日目には進出できない。最終的な代表決定の貢献度枠の計算と、NHK杯2日目に進出できる貢献度枠の計算は若干違うことを踏まえると不確実性が高いので、ここは確実に狙いたい順位だ。

全日本選手権終了時点で18位の佐々木との点差はこちら。

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これまでは2試合合計の点差だったので3点程度をターゲットとしていたが、これは1試合になるのでせいぜい1.5〜2点程度になると思われる。そうなると現在25位以下の選手が厳しいと取れるが、上位の選手がミスしたら当然順位はひっくり返るので25位以下の選手はもちろん、12〜24位までの選手もまったく油断はできない。

 

 

漫画:寄生獣の最終巻でミギーを失った泉新一が後藤と対峙した際のモノローグがある。

後藤が人間同士の諍いによそ見したほんの僅かの時間、新一は目の前にある鉄の棒で後藤の「すき間」を狙う一か八かの賭けに出ようとしていた。例え体に若干の寄生生物の成分が入り込んだ新一とはいえ、丸腰の人間と寄生生物の完成系ともいえる後藤との戦いは、圧倒的に不利としかいえなかったが彼は諦めていなかったのだ。不確実な要素だらけの状況だったが、その鉄の棒にこれまで培ってきた経験と知識の全てを託し、一縷の望みに賭けたシーンがある。下の画像はクライマックスの要のシーンで、個人的にとても好きなセリフの一つだ。

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全日本選手権の結果を元につらつらとなんとなく分析はしてみたが、全日本選手権の結果でNHK杯の残り2試合を予想するのはやはり無理がある。体操にラッキーパンチはないが同じように絶対もない。

点差の大小はあれど全員に個人総合枠を狙える可能性はあるのだ。それが個人総合枠でNHK杯に進出できた一番の特権だ。

やるからには可能性は決して0ではない。私が最も言いたかったことはこれだ。

 

選手それぞれ目標や戦略があると思うが、怪我なく6種目×2日間の大変な試合を乗り切れることを祈る。

全日本体操個人総合選手権観戦記

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2024年4月11日〜14日に行われた全日本体操個人総合選手権に行ってきた。これまでの大会と変化している点がいくつかあったので記憶が新しい内に観戦記として残そうと思う。

 

今年のパリオリンピックの代表選考会も兼ねて実施された今大会は毎年シーズンの幕開けとなる大会に位置する。今回変化した点が多かったのは、主催である日本体操協会の財政難が関係している。

昨年夏、令和4年度の決算で2.6億円の赤字となった報道(体操協会の赤字2.6億円 22年度、五輪選考会に影響 - 日本経済新聞)があった。決算書は協会の公式サイトに公表されており、10億円超の収入規模の法人が2.6億円の赤字を出したインパクトは強いが、純資産額9億円の約30%にあたる金額を取り崩したという点においてもかなり衝撃的だった。端的に説明するとこの状況がそのまま続けば令和4年度末(2023年3月末)の約2年強経過後、つまり遅くとも来年の夏頃に債務超過する計算になる。会計に従事している立場としての意見だが、コロナ初年度でもないのになぜここまでの数字に至ってしまったのか理解に苦しむし、公表されている財務諸表から得られる情報は限られているにもかかわらず突っ込みたくなる数字が多く並んでいる状態だ。しかし出てしまったものを変えることはできないので、今後どう改善していくかが肝心だ。

今年度の予算では更に協賛金収入が大幅に減っており依然厳しい財務状況である以上、大会運営に大幅な修正を入れざるを得ない事態で、昨年の全日本団体選手権から少しずつ変化を見せている次第だ。個人的に印象に残ったことを書き連ねていく。

 

高崎アリーナでの開催

昨年までは春先の選考会は東京で行われていたが、上記の理由から地方での開催となった。群馬県高崎市にある高崎アリーナは高崎駅から徒歩で向かえる位置にあり、遠征である私にとって利用しやすく、地方在住の身としては東京よりも居心地が良い印象だった。会場付近には特に何もないゆえ飲食や宿泊は駅周辺を利用するため、滞在中は会場と駅を何度か往復していたのだが、それを繰り返す途中なぜか気が狂いそうになる感覚があった。理由はよくわからないがこの単調な往復行為がどうやら性に合っていないらしい。

私は今回初めて利用したが、かなりキレイな体育館で東京の会場より狭い体育館だった。男女別日開催ではあったが、器具の配置は割とコンパクトで、男子の6種目全てを網羅する配置はこれまでかなり難しかったが、今回は角度によってはそれが可能になる席も十分存在した。ラッキーなことに予選の日、ほぼ6種目を見渡せる席に座ることができて、楽しく観戦していたのだがこれが思わぬ落とし穴になった。

事件は後半の2班で起きた。2班は代表クラスの強い選手が多く集まっており、さらに毎度ながら6種目同時実施である。これまでも幾度となく見たい演技を見逃してきたわけだが、その大きな理由は自席から遠くに位置する器具の種目はどうしても視界にとらえることができず、知らないうちに演技が終わっていたという状況によるものだった。今回は6種目見渡せるのでそんな失敗は犯さないと思いきや、視界に収めることができるとはいえ、以前記事にも起こしたように同時に複数種目を観戦するのが不可能なことに変わりはない。つまり同時に行われる演技を視界に収める中で、私の意思で観戦の取捨選択をしなければならないことになったのだ。

例えば橋本選手のあん馬、杉野選手の鉄棒、岡選手のつり輪、三輪選手の平行棒が同時に視界に入ったとき、これらの種目の優先順位をつけるなどできないのだが、演技が始まる前の数秒の間にいずれかの演技を「見ない」という選択をせざるを得ない状況に追い込まれるのである。こういった状況が何度か訪れ、その度苦渋の選択を迫られ、見たい演技を切り捨てるような感覚を味わってしまい、予想だにしないストレスを抱えることになってしまった。何事も一長一短である。

 

物販の充実

毎回ユニフォームや飲食物の出店はあるが、それ以外に協会から選手のアクリルスタンド、キーホルダー、缶バッチが販売されていた。一切事前予告がなかったことが謎に残るが、選手のグッズが大会で販売されるのは初めて見た。特に缶バッチは、売り場の側を通る度、購入者が列をなしている状態だったのでかなり盛況だったように思う。これからSSR要素とか増えたりするのかしら。

 

予選の入場無料

協会が主催する大会で入場無料は初めての体験だった。しかも権威ある天皇杯の予選、少々驚いたがこちらも前述の財政難による影響と思われる。表向きは気軽に来場してもらうためとされていたが、入場料を有料で販売すれば当然それを管理する人員が一定数必要になるわけで、寂しい話だが平日の地方開催の試合は集客が見込めない。予想される観客数の入場料とそれにかかるコストを天秤にかけて後者が上回るという判断になったと思われるが、集客が見込めないとはいえ4年に1度のオリンピックの2次予選初戦である。無料なので全席自由席ということでどうなるのかと少し不安があったが、観客があまり多くなかったこともあり特に大きな問題はなかったように見受けられた。

とはいえ、私物を放り投げて複数席確保、演技中の席移動といったいわゆるマナー違反とされる行為は散見された。入場を無料にして全席自由席にした時点で、有料販売の試合と比べて品位の下がる行為が増えるのは市場経済の常である。フライトのファーストクラスとエコノミークラスで客層が異なるのと同じ話で、運営側も織り込み済みだろうし、特に明確なルールも設けておらず且つ注意喚起もしない状況でマナー違反を一掃するのは不可能に近く、ある程度は飲み込まなければならない。

ただ個人的に気になったのが、私が視認した範囲で前述したマナーに欠ける行為を行なっていた中に、応援しているチームのグッズを身に纏っていた観客がいたことである。受け売りだが、"応援と価値を下げることを同時にしてはいけない"し、応援している選手、チームがいるファン全員が肝に銘じるべきだ。

とはいえ私自身も正しい観戦を行なっていると堂々と胸を張っていえるかというと、首を縦には振る自信はない。自身の行動を改めて見返して、不特定多数が集う場ということを意識してそれぞれが快適に観戦できるよう心掛けたい。

 

試合の演出

ここ最近の試合で、選手入場の演出を試行錯誤している様子が伺えたが今回も新しい演出が導入されていた。前回の全日本団体選手権で選手入場時にカウントダウンと照明の演出を行なっていたが今回も引き続き行われ、決勝では新たにエスコートキッズの演出も追加で行われた。予選上位から6人1組で班分けされて選手紹介が行われるのだが、その先頭をエスコートキッズが先導し、選手紹介後キッズにハイタッチをして捌ける、という流れでこれが非常に良かった。

まずキッズがかわいい。しっかり先導してもかわいいし、モタモタしてもかわいいし、気恥ずかしそうにしているのもかわいい。そしてそれを見ている選手もかわいいし、しゃがんでハイタッチする姿もかわいい。何がどうなってもかわいいにしか転ばないかわいい充満状態のアリーナはユートピアと化した。かわいいは正義。もっとやれ。

そして試合後、上位3名のみで表彰式が行われてあっという間に退散、という流れが定番だったが、出場選手全員がアリーナを周回する「ありがとうラン」なるものが行われた。お手振りをしながら会場を一周するという単純な演出ではあったが、これも非常に良かった。ありがとうは選手から観客に対してかと思われるが、観客側としては勝者だけでなく出場者全員に感謝したい気持ちでいっぱいなので、選手に対して手を振ったりすることでそれを表せる機会になって嬉しかったし、シンプルにお互い手を振り合うというのは快い。それに演技は知っているが顔はいまいち把握できていないという選手が何人かいるが、そういった選手の顔をしっかり拝見することができてとても良かった。選手が演技以外でアピールする(やる人は少なそうだが)場面が増えたことで新たな広がりが生まれそう。ほぼコストゼロで選手・観客ともに満足度が上がる感覚があって、とても素敵な空気感を味わえた。

強いて改善点を挙げるとすれば、比較的外側を周回しており、後方に座っている観客は見えにくい状況だったと思うのでもう少し内側を周るとよいのかなと。

体操競技は競技の特性上、怪我のリスクを避けるため試合中の演出はほとんどできない状況となっているが、試合前後の時間を利用して観客を楽しませる演出がたくさん盛り込まれていてとても楽しかった。

 

全日本選手権はシーズン最初の試合ということと、個人的には仕事の繁忙期を越えて行われる時期でもあるので、毎年一番心待ちにしている試合だ。代表選考会の皮切りになるのでどうしても重い雰囲気になってしまうのが少し辛いところでもあるが、今年は例年より工夫が感じられて演技以外でも楽しいと思う場面が多かった。

まだ課題の多い体操競技だけど、NHK杯もさらに楽しめるといいなあ。

パリオリンピック代表候補《ナショナル選手・その他編》

前回に引き続きパリオリンピック代表候補について紹介。ラストは現時点でのナショナル選手とそれ以外で個人的に注目している選手を紹介する。(年齢、所属は2024年4月1日現在のもの)

 

まずは2023年度のナショナル選手である3選手。

 

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川上翔平

写真左の選手で、徳洲会体操クラブ所属の20歳。前回のオリンピックではまだ高校生だったが、今やすっかり日本のトップ選手の一人となっている。2023年に行われたアジア大会の代表に選出されており、団体銀メダルに貢献している。

若い選手だが安定感があるのが最大の特徴。団体戦でのトップバッターはそのあとに演技をする選手への影響が大きいので、経験値の高い選手が担うことが多いが、昨年出場したユニバーシティゲームズ、アジア大会ともに多くの種目でトップバッターを任されていた。若手選手かつ新型コロナの影響から国際大会の経験は比較的少ないが、このような采配になったのは持ち前の安定感の高さゆえといえる。

平行棒、鉄棒を得意としており、特に鉄棒は2022年の全日本種目別選手権で国内の強敵をおさえて優勝するほど高い実力を持っている。多くの技を持っているので演技構成をガラッと変えてくる可能性も十分にあるが、果たしてどう挑んでくるか。

注目種目は跳馬。元々Dスコア5.6のユルチェンコ3回ひねりを跳べるのだが、昨年の試合では不認定に終わってしまった。ところがユルチェンコ後方屈身2回宙返りを習得したことから、今回の選考会ではそれに挑んでくる模様。こちらもDスコア5.6の大技で、この技に成功すれば代表に近くなると思うので要注目。

 

松見一希

写真中央の選手で、徳洲会体操クラブ所属の26歳。大学時代はあまり目立った成績を残していなかったようだが、社会人以降個人総合を含め存在感が出てきた大器晩成の選手。

6種目満遍なく高いスコアを出す力を持っているが、突出した種目というのはなく典型的な個人総合型の選手といえる。要するに個人総合枠での代表入りが必須となる。

注目種目はゆかとつり輪。ゆかは最も得意種目としているが比較的Eスコアが伸びにくいので、Dスコアをどこまで上げるかが注目点。日本の苦手種目であるつり輪で安定して14点台を出せる選手なので、つり輪を伸ばして日本の弱点を補ってほしい。

美しい体操が特徴で特に平行棒の倒立はその象徴といえるので、個人的には平行棒をあげてほしいと密かに期待している。

 

津村涼太

写真右の選手で、鹿屋体育大学所属の21歳。昨年初めてナショナル入りした選手で、日本代表で出場したアジア大会では団体銀メダルのほか種目別あん馬でも銀メダルを獲得している。

注目種目はあん馬とつり輪。あん馬はスピードのある開脚旋回が特徴で、高いDスコアを持ちながら安定感が高く15点を出すことが珍しくなくなっているレベル。本人いわくまだ伸びしろがあるようで、さらにDスコアを上げてくる可能性が高い。つり輪はアジア大会では期待した評価を得ているとはいえなかったが、数少ないあん馬とつり輪が強い選手ゆえの優位性があるのでどう挑んでくるか注目したい。

体操男子の強豪大学といえば日本体育大学順天堂大学の2強なのだが、近年鹿屋体育大学がその牙城を崩す勢いで力をつけている。現状その筆頭が津村選手なので、鹿屋体育大学初のオリンピック代表といった点でも注目したい。

 

 

最後に日本代表、ナショナル選手以外で注目している5選手。選出基準は私の独断。

 

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岡慎之助

写真上段左の選手で、徳洲会体操クラブ所属の20歳。2022年の全日本選手権の予選を3位で通過し大きく注目を浴びたが、決勝で前十字靭帯を断裂する大怪我をした過去がある。昨年から無事試合に復帰し、NHK杯は11位。全日本決勝では85点を超える高得点を出している。

注目種目はつり輪と平行棒。つり輪は怪我の影響で重点的に強化しており、元々苦手種目だったが大きく力をつけて今では14点台を取れるようになった。平行棒は元々得意種目で15点台を出せる力を十分に持っている。本来は跳馬、鉄棒も得意だが跳馬は怪我の影響で難度を落としており、鉄棒も怪我以降難度を下げており、且つ波も大きい印象。ゆかとあん馬も高い得点を出せるので、ゆか・あん馬・つり輪・平行棒の4種目でどこまで伸ばせるかが鍵。

体操のセンスは随一のものがあると思われるので、持ち前の実力をどこまで出し切れるか。

 

佐々木郁哉

写真上段右の選手で、仙台大学所属の21歳。2023年に大きく躍進しNHK杯は16位。他の選手と比べると若干実力が劣る印象もあるが、このへんの年齢の選手が伸ばしてくると一気に代表候補に名乗り出てくるパターンも可能性として十分あり得る。

注目種目はあん馬跳馬あん馬は開脚旋回を得意としており、Dスコアを上げて攻めてくる可能性あり。跳馬はDスコア5.6のロペスが非常に安定しており、Dスコア6.0のヨネクラを跳べればかなり代表に近づけるのではと予想。課題は全体的なEスコアをどこまで残せるか。

体操選手では珍しく毎日のようにSNSで演技の動画を上げているかなりマメな選手。こういった活動が報われてほしいという思いと、社会人よりも選手層の薄い大学生の中では注目株の一人なので、今回の選考会で台風の目になってほしい。

 

春木三憲

写真下段左の選手で、徳洲会体操クラブ所属の25歳。清風高校から日本体育大学へ進学した体操界ではエリートといえる経歴で、昨年のNHK杯は19位。

注目種目はつり輪と平行棒。つり輪は最も得意な種目としており、個人総合での代表入りは少し難しい現状を踏まえると、おそらくこの種目で大きく点を稼ぐ戦略になるかと思われる。跳馬でDスコア5.6のロペスを持っているが、三輪選手や佐々木選手ほど点を伸ばすのは難しく、貢献度という点で狙うのは厳しいと予想。もう1種目武器がほしいところなのだが、それが平行棒になるのではと予想している。過去にワールドカップシリーズでG難度のツォラキディスを成功させたことがあるので、その勝負強さを見てみたい。

元々安定感の高い選手で、団体戦にいると心強いタイプといえる。この2年間代表選考には中々絡めなかったが実力は十分なので期待したい。

 

杉野正尭

写真下段中央の選手で、徳洲会体操クラブ所属の25歳。東京オリンピックでは代表選考会で北園選手とギリギリまで競り合い、2022年の選考会でも谷川翔選手と最後まで競り合いながらも落選している。そして昨年のNHK杯はまさかの21位で、代表争いで名前があがることはほとんどなかった。

注目種目はあん馬と鉄棒。どちらも世界トップクラスの高いDスコアを持っており、昨年の全日本種目別選手権ではあん馬は優勝、鉄棒は3位の成績を残している。秋に行われた全日本団体選手権でも高いDスコアの演技を成功させる強さを見せた。ただ東京オリンピックの選考会はあん馬、2022年の選考会では鉄棒、どちらも得意種目で大きなミスが出たことで代表入りを逃している。

個人総合はもちろん貢献度枠でもかなり強い選手で、日本代表に最も近いところにいながらも落選するという点が印象に強いからか、“体操界一惜しい男”という不名誉なレッテルを持つ。間違いなく世界に通用する力を持つ選手だと思うし世界で活躍する姿を見たい選手の筆頭なので、今度こそ笑顔で試合を終える杉野選手を見たい。

 

髙橋一矢

写真下段右の選手で、徳洲会体操クラブ所属の27歳。いわゆる花の96年世代の一人で、2022年の選考会ではギリギリまで代表候補であったが惜しくも落選。昨年のNHK杯は予選落ちしているが、全日本種目別選手権ではつり輪で2位の成績を収めている。

注目種目はゆかとつり輪。つり輪の印象が強いがゆかとあん馬も得意としている。あん馬は層が厚い種目なので中々攻めにくいが、ゆかは現ルールの特性上Dスコアを上げにくい一方、この種目で安定感のある演技をする選手なので武器として臨んでほしいという個人的願望を抱いている。元々スペシャリストだったのでつり輪は高得点を出せる力があるが、ここ最近力技の姿勢欠点が目立つからか、Eスコアが伸びにくくなっているのが少し気になるところ。日本の弱点でもあるこの種目で高得点を出せると頼もしいので、攻めの演技を見せてほしい。

個人総合での代表入りは難しいので貢献度枠での代表入りを目指すと思うが、ゆかとつり輪は特に点数を上げにくい種目のため、厳しい戦いを強いられると予想。南選手同様、他力本願にならざるを得ないが、実直なスタイルが好きなので自身の力を十分に発揮できることを切に願う。

 

 

今回ピックアップした橋本選手を除く18名以外から選出される可能性も十分ありえるくらい本当に層が厚い日本。団体戦で金メダルを獲ることを念頭に置くと特定の種目に特化した選手が選ばれるのが望ましいが、特定の種目に特化しているとそれ以外の種目でリスクが生まれるデメリットも出てきてしまう。選考ルール的には安定感が高い選手が有利となるが、何より選手それぞれが持ち前の実力を出し切れることが金メダル獲得に最も近くなると思う。

 

参加する選手全員が笑顔で選考会を終えられるというのは限りなく難しいといえますが、全ての選手が怪我なく悔いのない演技ができることを心から祈っています。