インドネシアのジャカルタで行われた体操競技の世界選手権が、10/25に幕を閉じた。
昨年はオリンピックが開催されたので、世界選手権は2年振りの開催。
今年も選手たちが素晴らしい演技をたくさん披露してくれたおかげで、とても盛り上がったように思う。
今回も大会を通じて感じたことを述べていく。
橋本大輝選手 史上二人目の個人総合三連覇
2022、2023年の個人総合覇者として挑んだ今大会。
ディフェンディングチャンピオンとはいえ昨年のパリオリンピックでは表彰台を逃してしまったので、どちらかといえば挑戦者という心持ちで今大会に臨んでいたと思われる。
予選はミスがありながらも1位で通過。
予選で失敗のあったゆかは、失敗箇所を見事修正し、難度を上げた構成を実施。
あん馬は危ないところがあったものの、脅威の修正力で危うく見せない技術はさすが。
5種目終了時点で2位とは約0.3の差で暫定首位。
橋本選手の最大のライバルである張選手(CHN)が、先に演技をして少しミスを見せたので、本人的には少し余裕が持てたところもあっただろう。
ところが苦手なアドラー1回ひねり、予選でミスが出たアドラーハーフ〜コールマンの組み合わせ、少し不安の残るリューキン、その全てを実施し、終末技の着地をピタリと止めて、圧巻の演技を披露。
そしてそのまま首位をキープし、個人総合三連覇を成し遂げた。
中盤の伸身トカチェフは抜いたものの、一切守る姿勢を見せず、攻め一辺倒で勝利する姿は圧倒的だった。
個人的に最も印象に残ったのは平行棒。
倒立に収める際にブレがなく、芯の通った強い倒立の止め方が目に付いた。調子の良さが存分に伝わる捌きで、疲れが見えてくる5種目目とは思えない動きは、勝利を確信させ、橋本大輝の勝負強さを改めて感じることができた。
今回も「内村航平以来」という枕詞がついて報道されていたが、当の本人はあまり気にしていない様子で、インタビューもカラッとした表情で清々しく答えていた。
一度負けて底知れぬ悔しさを知った橋本選手はまた一段と強くなったようで、日本のエースとして大変頼もしく感じられた。
一方、パリオリンピック覇者で初出場の岡慎之助選手は、対照的に苦しい時間を過ごすこととなった。
予選は複数のミスがあって、まさかの12位。
決勝は4種目目まで本人の強さを存分に出せていたが、予選で大きく失敗したゆかを修正しきれず、大過失を出したのが決定打となり、5位という結果で終わった。
1ヶ月前の国内試合で腰を痛める怪我を負い、予選のアップ中にもまた痛めてしまったようで、身体の痛みに苦しめられた。
会場で結果が表示された後や、インタビューでの悔しさが隠しきれない表情が特に印象に残った。
パリオリンピックでのニコニコ慎ちゃんとはうってかわって、現状を真正面から受け止める力強い姿は、まるで別人なのではないかと感じるほどだった。
初めての世界選手権は少しほろ苦い結果になったが、ここからさらに強くなる岡慎之助を楽しみにしている。
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