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パリオリンピック代表候補《ナショナル選手・その他編》

前回に引き続きパリオリンピック代表候補について紹介。ラストは現時点でのナショナル選手とそれ以外で個人的に注目している選手を紹介する。(年齢、所属は2024年4月1日現在のもの)

 

まずは2023年度のナショナル選手である3選手。

 

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川上翔平

写真左の選手で、徳洲会体操クラブ所属の20歳。前回のオリンピックではまだ高校生だったが、今やすっかり日本のトップ選手の一人となっている。2023年に行われたアジア大会の代表に選出されており、団体銀メダルに貢献している。

若い選手だが安定感があるのが最大の特徴。団体戦でのトップバッターはそのあとに演技をする選手への影響が大きいので、経験値の高い選手が担うことが多いが、昨年出場したユニバーシティゲームズ、アジア大会ともに多くの種目でトップバッターを任されていた。若手選手かつ新型コロナの影響から国際大会の経験は比較的少ないが、このような采配になったのは持ち前の安定感の高さゆえといえる。

平行棒、鉄棒を得意としており、特に鉄棒は2022年の全日本種目別選手権で国内の強敵をおさえて優勝するほど高い実力を持っている。多くの技を持っているので演技構成をガラッと変えてくる可能性も十分にあるが、果たしてどう挑んでくるか。

注目種目は跳馬。元々Dスコア5.6のユルチェンコ3回ひねりを跳べるのだが、昨年の試合では不認定に終わってしまった。ところがユルチェンコ後方屈身2回宙返りを習得したことから、今回の選考会ではそれに挑んでくる模様。こちらもDスコア5.6の大技で、この技に成功すれば代表に近くなると思うので要注目。

 

松見一希

写真中央の選手で、徳洲会体操クラブ所属の26歳。大学時代はあまり目立った成績を残していなかったようだが、社会人以降個人総合を含め存在感が出てきた大器晩成の選手。

6種目満遍なく高いスコアを出す力を持っているが、突出した種目というのはなく典型的な個人総合型の選手といえる。要するに個人総合枠での代表入りが必須となる。

注目種目はゆかとつり輪。ゆかは最も得意種目としているが比較的Eスコアが伸びにくいので、Dスコアをどこまで上げるかが注目点。日本の苦手種目であるつり輪で安定して14点台を出せる選手なので、つり輪を伸ばして日本の弱点を補ってほしい。

美しい体操が特徴で特に平行棒の倒立はその象徴といえるので、個人的には平行棒をあげてほしいと密かに期待している。

 

津村涼太

写真右の選手で、鹿屋体育大学所属の21歳。昨年初めてナショナル入りした選手で、日本代表で出場したアジア大会では団体銀メダルのほか種目別あん馬でも銀メダルを獲得している。

注目種目はあん馬とつり輪。あん馬はスピードのある開脚旋回が特徴で、高いDスコアを持ちながら安定感が高く15点を出すことが珍しくなくなっているレベル。本人いわくまだ伸びしろがあるようで、さらにDスコアを上げてくる可能性が高い。つり輪はアジア大会では期待した評価を得ているとはいえなかったが、数少ないあん馬とつり輪が強い選手ゆえの優位性があるのでどう挑んでくるか注目したい。

体操男子の強豪大学といえば日本体育大学順天堂大学の2強なのだが、近年鹿屋体育大学がその牙城を崩す勢いで力をつけている。現状その筆頭が津村選手なので、鹿屋体育大学初のオリンピック代表といった点でも注目したい。

 

 

最後に日本代表、ナショナル選手以外で注目している5選手。選出基準は私の独断。

 

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岡慎之助

写真上段左の選手で、徳洲会体操クラブ所属の20歳。2022年の全日本選手権の予選を3位で通過し大きく注目を浴びたが、決勝で前十字靭帯を断裂する大怪我をした過去がある。昨年から無事試合に復帰し、NHK杯は11位。全日本決勝では85点を超える高得点を出している。

注目種目はつり輪と平行棒。つり輪は怪我の影響で重点的に強化しており、元々苦手種目だったが大きく力をつけて今では14点台を取れるようになった。平行棒は元々得意種目で15点台を出せる力を十分に持っている。本来は跳馬、鉄棒も得意だが跳馬は怪我の影響で難度を落としており、鉄棒も怪我以降難度を下げており、且つ波も大きい印象。ゆかとあん馬も高い得点を出せるので、ゆか・あん馬・つり輪・平行棒の4種目でどこまで伸ばせるかが鍵。

体操のセンスは随一のものがあると思われるので、持ち前の実力をどこまで出し切れるか。

 

佐々木郁哉

写真上段右の選手で、仙台大学所属の21歳。2023年に大きく躍進しNHK杯は16位。他の選手と比べると若干実力が劣る印象もあるが、このへんの年齢の選手が伸ばしてくると一気に代表候補に名乗り出てくるパターンも可能性として十分あり得る。

注目種目はあん馬跳馬あん馬は開脚旋回を得意としており、Dスコアを上げて攻めてくる可能性あり。跳馬はDスコア5.6のロペスが非常に安定しており、Dスコア6.0のヨネクラを跳べればかなり代表に近づけるのではと予想。課題は全体的なEスコアをどこまで残せるか。

体操選手では珍しく毎日のようにSNSで演技の動画を上げているかなりマメな選手。こういった活動が報われてほしいという思いと、社会人よりも選手層の薄い大学生の中では注目株の一人なので、今回の選考会で台風の目になってほしい。

 

春木三憲

写真下段左の選手で、徳洲会体操クラブ所属の25歳。清風高校から日本体育大学へ進学した体操界ではエリートといえる経歴で、昨年のNHK杯は19位。

注目種目はつり輪と平行棒。つり輪は最も得意な種目としており、個人総合での代表入りは少し難しい現状を踏まえると、おそらくこの種目で大きく点を稼ぐ戦略になるかと思われる。跳馬でDスコア5.6のロペスを持っているが、三輪選手や佐々木選手ほど点を伸ばすのは難しく、貢献度という点で狙うのは厳しいと予想。もう1種目武器がほしいところなのだが、それが平行棒になるのではと予想している。過去にワールドカップシリーズでG難度のツォラキディスを成功させたことがあるので、その勝負強さを見てみたい。

元々安定感の高い選手で、団体戦にいると心強いタイプといえる。この2年間代表選考には中々絡めなかったが実力は十分なので期待したい。

 

杉野正尭

写真下段中央の選手で、徳洲会体操クラブ所属の25歳。東京オリンピックでは代表選考会で北園選手とギリギリまで競り合い、2022年の選考会でも谷川翔選手と最後まで競り合いながらも落選している。そして昨年のNHK杯はまさかの21位で、代表争いで名前があがることはほとんどなかった。

注目種目はあん馬と鉄棒。どちらも世界トップクラスの高いDスコアを持っており、昨年の全日本種目別選手権ではあん馬は優勝、鉄棒は3位の成績を残している。秋に行われた全日本団体選手権でも高いDスコアの演技を成功させる強さを見せた。ただ東京オリンピックの選考会はあん馬、2022年の選考会では鉄棒、どちらも得意種目で大きなミスが出たことで代表入りを逃している。

個人総合はもちろん貢献度枠でもかなり強い選手で、日本代表に最も近いところにいながらも落選するという点が印象に強いからか、“体操界一惜しい男”という不名誉なレッテルを持つ。間違いなく世界に通用する力を持つ選手だと思うし世界で活躍する姿を見たい選手の筆頭なので、今度こそ笑顔で試合を終える杉野選手を見たい。

 

髙橋一矢

写真下段右の選手で、徳洲会体操クラブ所属の27歳。いわゆる花の96年世代の一人で、2022年の選考会ではギリギリまで代表候補であったが惜しくも落選。昨年のNHK杯は予選落ちしているが、全日本種目別選手権ではつり輪で2位の成績を収めている。

注目種目はゆかとつり輪。つり輪の印象が強いがゆかとあん馬も得意としている。あん馬は層が厚い種目なので中々攻めにくいが、ゆかは現ルールの特性上Dスコアを上げにくい一方、この種目で安定感のある演技をする選手なので武器として臨んでほしいという個人的願望を抱いている。元々スペシャリストだったのでつり輪は高得点を出せる力があるが、ここ最近力技の姿勢欠点が目立つからか、Eスコアが伸びにくくなっているのが少し気になるところ。日本の弱点でもあるこの種目で高得点を出せると頼もしいので、攻めの演技を見せてほしい。

個人総合での代表入りは難しいので貢献度枠での代表入りを目指すと思うが、ゆかとつり輪は特に点数を上げにくい種目のため、厳しい戦いを強いられると予想。南選手同様、他力本願にならざるを得ないが、実直なスタイルが好きなので自身の力を十分に発揮できることを切に願う。

 

 

今回ピックアップした橋本選手を除く18名以外から選出される可能性も十分ありえるくらい本当に層が厚い日本。団体戦で金メダルを獲ることを念頭に置くと特定の種目に特化した選手が選ばれるのが望ましいが、特定の種目に特化しているとそれ以外の種目でリスクが生まれるデメリットも出てきてしまう。選考ルール的には安定感が高い選手が有利となるが、何より選手それぞれが持ち前の実力を出し切れることが金メダル獲得に最も近くなると思う。

 

参加する選手全員が笑顔で選考会を終えられるというのは限りなく難しいといえますが、全ての選手が怪我なく悔いのない演技ができることを心から祈っています。