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注目したい海外選手《2023世界選手権編》

待てど暮らせどYouTubeの FIGチャンネルに予選の動画が投稿されない。

若干嫌な予感はしていたが、どうやら配信が行われたこちらのWorld Artistic Championships 2023に移行したようだ。今年は前年と異なり全ての種目をこちらのサイトでライブ配信しており、予選の一部はジオブロックで他国のVPNを利用しないと視聴不能だったがそれ以外は日本からでも視聴可能で大変ありがたかった。しかし予選動画の保存もこちらのサイトに一括されるのは想定外だった。YouTubeは検索や操作性に優れていたというのもあるが、そもそも2つのコンテンツに同じ大会の動画を散りばめてほしくないというのが一番の本音。そしてこのサイトの重いことよ…ヨーロッパ選手権の動画もあるのは大変助かるが、YouTubeで一括管理するのは難しいのだろうか。新体操はYouTubeにアップされているしハイライト動画もアップされているので、チャンネル自体が消滅することはないのだろうが、今後どうなるのかが非常に不安。

世界選手権はその名の如く世界中の強者体操選手が一同に集うので、予選の動画が出揃った後、決勝で気になった選手の予選の動画を見返したり、これまでの大会の演技と比較するのにこのFIGチャンネルの予選動画が非常に役立っていたのでとても残念。

 

FIGに対する嘆きはさておき今回の世界選手権も前年同様、気になる選手がたくさんいた。個人的に特に気になった海外選手について備忘録の意味もこめて紹介していく。

 

ABBADINI Yumin(ITA)

イタリアの選手で前年の国内大会の個人総合で優勝を果たしているので、イタリアのエースといったポジションでよいのだろうか。以前から存在は知っていたのだが鉄棒が得意な選手といった印象しかなく、どういった特徴があるかとかそういった情報は正直把握していなかった。

動画は予選最終種目の鉄棒。今回の世界選の予選は来年のパリ五輪の予選も兼ねており、前年に出場を決めている中国・日本・イギリスを除いた上位9カ国がパリ五輪の団体出場権得るのだが、イタリアは予選最終班で既に多くの国の点数が出揃っている状況の中演技に挑むこととなった。5種目目の平行棒まで良い演技を揃えていたこと、アメリカ以外は複数国が接戦だったこと、同じ班に韓国が出ていたことなどが要因だったか知らないが最終種目の鉄棒はかなり守りに入った演技であった。コバチ系の放れ技は抜いてDスコアを落としてでも大過失をしない演技構成で臨んでいた。そんな中、鉄棒を得意としているLEVANTESI選手が終末技で転倒。最終演技者のABBADINI選手はまさしくパリ五輪の切符をかけた演技を行うことになったわけだが、そんな中でG難度のカッシーナ、コールマンをしっかり決め、終末技もほぼ着地を止めて完璧な実施を披露。見事イタリアの五輪団体進出に導いた。

こういった場面で自分の演技を確実に決めてきた姿に圧巻だった。あん馬は開脚旋回が美しく華やかで、ゆかや平行棒も安定した演技が光っていた。個人総合でも6位入賞を果たすなど明らかに前年よりも力をつけた印象で、調べるとまだ22歳で橋本大輝選手と同じ年齢。今後がとても楽しみ。

 

SU Weide(CHN)

中国の若手選手というくくりでいいと思うが、2000年生まれの23歳。動画は鉄棒の種目別決勝の演技。世界選は初出場だったこともあってか団体決勝の鉄棒で2度の落下をしてしまった。かなり悔しい思いを抱えた中で挑んだと思われる種目別決勝だったと思うが、団体でミスした技をしっかり入れながら本人の持ち味を発揮し、美しさが評価され見事銅メダルを獲得。序盤のリューキンのしなやかさがとにかく素晴らしい。アドラー系の倒立のはめ方も素晴らしいし伸身トカチェフコバチ系の放れ技の姿勢もとても良い。

ゆかの演技もとても良かったし、その上ロペスを跳んでくるのが中国の強さ。中国はすっかり鉄棒が強い国になったなあ。

 

JUDA Paul(USA)

アメリカ代表の他4選手は知っていたがJUDA選手は把握しておらず、今回ほぼ初見の状態。動画は跳馬の種目別決勝。1本目はなんとヤンウェイを跳んできた。希少技な上、D5.6は少し低いのではと個人的に感じるくらい跳ぶだけでもかなり凄い技だが、しっかりと立ってきた。2本目はドリッグス。着地は大きく前に1歩出たが、最初から最後まで一切足が開かない真っ直ぐな空中姿勢はどこを減点するんだと思っていたら案の定Eスコア9.300のハイスコアが出た。小柄な選手で跳馬が得意ということでパワー系かと思いきや、あん馬では開脚旋回をふんだんに使った構成を実施しており、なんだか意味がわからない。彼も橋本世代の2001年生まれの22歳。

アメリカは3人が跳馬の種目別にエントリーし、D6.0を持つHONG Asher選手がチーム内3位になり予選落ちという謎の層の厚さがあり、銀メダルを獲得したYOUNG選手含め多様な跳躍を持っているのがかなり面白い。

 

LIUBIMOV Ilia(ISR)

こちらは個人総合決勝の鉄棒の演技。突如挟み込まれた彼の演技の放れ技の美しさに思わず目を引いたわけだが、雄大トカチェフのあとにさらに雄大コバチを実施。終末技も大変美しく腰の高い着地を見事止めていた。Eスコア8.266で辛めの採点が気になる。YouTubeで調べてもあまり動画が出てこず情報が少ない選手だが、こういった選手を発見できるのが世界選の良いところ。彼も橋本世代の2001年生まれ。国の情勢が不安でしかないがこれからもたくさん演技が見られるよう祈っている。

 

DOLCI Felix(CAN)

こちらはゆかの種目別決勝の演技。まず気になったのはルックス。端正なルックスなので俳優と見紛ったがしっかり体操選手だった。全体的にタンブリングが美しく、ひねり技もビッグタンブリングも安定していて着地姿勢も高い。卒なくこなしていたので難度は低く見えてしまうがDスコアは6.0と比較的高い。

正直カナダ自体全くのノーマークだったが、団体は予選でイギリスを上回って4位に浮上。決勝では7位になってしまったが、彼は安定した演技を通していた様子。2002年生まれの21歳だが3大会連続で世界選手権に出場している立派な経験者だったようで、今後注目していきたい。

 

偶然なのかはわからないが全員が橋本大輝選手とほぼ同世代で、体操選手として脂が乗る年齢ということなのだろうか、はたまた東京五輪で大覚醒した彼に影響されて世代ごと強くなったかはわからないが、中国のBoheng選手含めて同じ世代の選手が国を越えて切磋琢磨しているのが感じられる。パリ五輪までもう少し時間があるので、それに向けてなるべくたくさんの選手に注目したい。