一人静かに内省す

日本男子を中心に体操競技応援中!体操競技について思いのまま綴っています

ルール改正のドラフト版(2025−2028)が現れた!

体操競技は五輪開催年翌年にルール改正が行われるが、パリ五輪後の2025〜2028のいわゆるロスルールのドラフト版が突如ツイッターに現れた。FIGの技術委員の提案とのことだが従前はどのように情報開示されていたかが全くわからないので、ツイッターで情報を最初に得るというのがそこそこ衝撃だった。そしてそのツイートを翻訳する猛者も現れた。なんとありがたいことでしょう。以下、当該ツイート。(センシティブな内容ではありません)

また、各種目の技難度の変更は以下Instagramアカウントでわかりやすく説明している。

体操競技はこうした一部の情報強者を頼りに数多の情報を得ている。俗にいう公式がもっと積極的かつ迅速に情報提供をしてほしいところだが、今回はそれが論点ではない。

今回のルール改正についてはあくまでドラフト版なのでこれらがすべて正式な変更点ではない。私は体操競技を経験したことは無く、なんなら男子でもない。選手が実際に演技してどう影響があるかは想像の範疇に過ぎないし、長年深く体操競技及びルールを追求した身ですらない。ただ推しが体操競技の日本代表ということと、こういうルールを考慮して体操ニッポンが今後どう対応するかなどは非常に興味深い部類なので、個人的に気になった部分のみ個人の個人による所感をつづる。

 

 

1.一般条項

・技カウントが最大10技から8技へ(ジュニアも同様)

→キタで………!!!長かった……DE制になり17年、体操競技の技の進化は目覚まし過ぎて選手の身体への影響が気が気でなかった。エース級の選手の怪我も絶えないし、スポーツの真価としてどうなのかと頭を痛めていたがとうとう英断したようです。やったね!今回のルール改正で一番支持したい箇所。

・終末技の特別要求点は難度と同一(F難度の終末技を実施した場合は0.6)

→終末技はその名の如く演技の最後に行うため体力が少ない状態で行うので、多くの選手が特別要求の0.5を最低限確保するためD〜E難度の技を実施するケースが多く、特にG難度以上の技を実施する選手がかなり少なかったがこれを機に大技が増えるのでしょうか?

あん馬以外のStick(着ピタ)ボーナスをC難度以上の終末技において0.1加点(跳馬は不明)

→Eスコアでの加点はこれが初?いち観客として演技内容と得点のギャップを感じることが多いと感じているのでとても良いと思う。跳馬は不明とのことだけど技の難度でボーダーを決めにくいからかな。跳馬こそ加点してほしいくらい着ピタするととても盛り上がるので続報に注目。

あん馬平行棒鉄棒のアップ時間が50秒に

→つり輪が含まれていないのが若干気になるが器具の調整が他と比べて少ないからかな?選手の安全面を考慮した改正で何より。

 

2.ゆか

・コレオグラフィー要素を加える。ただし8技に含める必要はない

→これおぐらふぃー……音楽なしで?全く想像がつかない。ちなみに私自身、航くんのコレオをとても見てみたい身であるという自覚はある。冗談はさておきさすがにこれは却下されることを願う。

・バランスの要素を加えなくてはならない。ただし8技に含める必要はない

→10点満点制度で実施されていたのは存じているが、ここにきてなぜそれを要素に含めるのか意図がわからなすぎる。同じく却下されることを願う。

・グループの変更 グループI:変更なし、グループII:前方の2回宙返り系、グループⅢ:後方の2回宙返り系、グループ4:1回ひねり以上をともなうタンブリング

東京ルールで2回宙返りが必須になったけど、とうとう前方後方両方必須になった。現状日本選手でクリアしている選手は数名じゃないかな?そもそもビッグタンブリングは体力が必要だし怪我に直結する技という印象があるのだが、前回のルール改正を踏まえてもどうやらFIGは縦回転を積極的にやってほしいみたいね。必然的に2技は取り込むことになるのか…見た目が華やかだから積極的に導入したい意図は一応理解するけど。あと、現ルールの抜け穴ともいえる伸身前宙の封じ込めもあるのかな?じゃあB〜C難度のひねり系の同一枠をどうにかしてほしい。ますます演技の画一化が進みそう。

・終末技は2回宙返り系でなくてはならない(ND -0.3、ジュニアは演技中の2回宙返りで良い)

→現状日本選手でクリアしているのは谷川兄弟しか思い当たらんが…かつて終末技はサルトが主流だったと聞いたことがあるけど、おそらく日本選手はサルトで落ち着くだろうな。内村航平登場以降は後方3回ひねりが主流だったがFIGは不満だったのかしら?(怒)  前述したように終末技は体力が少ない状態だし、且つ怪我のリスクがあるビッグタンブリングをやれというのはこれ如何に?それか8技になったんだから終末技ダブルくらいできるやろ、的なメッセージか?日本人含めアジア系選手にはかなり向かい風のルール変更だなあ。

・後方屈身ダブルC→D、屈身ダイビングダブルD→E、後方伸身ダブルD→E、伸身月面E→F、伸身新月面F→G、ナゴルニーI→J

→グループ技の変更に伴い後方2回宙返り系が総じて格上げ。終末技の難度と特別要求点が同一なら伸身ダブルで締める選手が増えたりするのかな?伸身サルトは流行りそうね。ナゴルニーはJ難度にしたところで誰がやるねん状態は変わらなさそう。

 

3.あん馬

・開脚旋回は最大4技

→え…なんでや…東京ルールでわざわざ開脚マジャシバを格上げしたにもかかわらずパリルールでさっさと格下げしてはいたけど、開脚旋回を積極的にやってほしいんじゃなかったの?ゆかのひねり技同様、あん馬も開脚旋回は技の見分けがつかないからとかいう理由じゃないだろうね…開脚旋回オンパレードの選手には大打撃で悲しい。開脚旋回が好きな私も悲しい。

・1/3ロシアン転向1080°D→C(ほか1/3ロシアン系格下げ)

→え…なんでや…ただでさえ日本選手あんまりやってないのに…ますますやる人減るやん…パタパタ好きの体操ファン結構多いんやで…

・ショーンE→D

→ベズゴの実施頻度と比較して整合性をとるためなのだろうか。だったらベズゴを格上げしてほしいな。ショーンとマジャールシバドが同難度になるのか。

 

4.つり輪

・ヤマワキC→B、ジョナサンD→C

→もはや規定技といっても過言ではない多くの選手が行う振動技だけど、とうとうか…という印象。北京五輪AA決勝の冨田さんを知っているので実は好ましい技ではないけど、グチョギーの廃れっぷりとの兼ね合いでしょうか。他の技に繋げやすいとの理由から前方系が多く実施されてるみたいだけど、グチョギーを格上げするのはダメなんでしょうか。

・バランディン1 E→F、バランディン2 F→G

→一部の超スペシャリストだけがやってる技の格上げ。何分腰折れの減点が多いから実施する選手が少ない大変な技だけどこれでやってくる選手は増えるかな?高難度技が少ないつり輪でG難度が増えるのはいいですね。

 

5.跳馬

・全技0.4格下げ

→10技から8技に減ることでDスコアが下振れることを見越しての格下げ。そこそこ妥当だと思うけどそれでもEスコアの減点が少ないし若干跳馬の点が突き出そうな気はする。跳馬の得手不得手というより他の種目との得点のバランスを考えるともう少しだけ下げたいところだけど、どうやら0.4という数字にこだわりがある様子。知らんけど。

 

6.平行棒

・ヒーリーD→C、単棒ヒーリーE→D

→とうとうきたかという印象。ヒーリーはほぼ全選手がやっているし、鉄棒ヤマワキと同じ匂いを感じる。実施点を減点しているならそれでいいのではと思うんだけどそうじゃないのかしら。単棒ヒーリーはやる人いなくなるんじゃないかな。

モリスエD→E、ベーレD→E(ほか2回宙返り腕支持系格上げ)

→腕支持系の技は減点項目が増えすぎて実施者が激減したと聞いたことがあるが、あまりの廃れっぷりにより格上げするのかな。FIGは本当に2回宙返りが好きなんだな…個人的に腕支持系は腕が痛そうで見てて辛いので今のルールが結構気に入っていたのだけどまた戻るのですかそうですか…これらが格上げすることでますます平行棒だけ上振れするのが個人的に気がかり。

 

7.鉄棒

・放れ技は2系統まで(コバチ系、トカチェフ系、ギンガー系、イエーガー系、マルケロフ系)

→あんなに多種の放れ技やらせたがってたと思ってたのに突然の制限にビックリ。3系統やる選手の方が少ないけど。

・ヤマワキは伸身姿勢でならなければならない。45°以上腰が曲がるとボローニンと判定

→今までこの基準が明確になっていなかったことに驚いた。

リューキンF→G、ウエストロム・デフ・ウィンクラーF→G

→概ね妥当かなという印象。カッシーナがF難度になったらどうしようかと思ったけどこれらの技の格上げで良かった。ウエストロムGでコスミックハーフがC難度ってのはなんかすごいな(語彙力)。

ゲイロードD→E、ペガンF→G(ほか屈身も格上げ)

ゲイロードってとっくにE難度になってると思ってた。アドラーハーフとゲイロードが同難度の方が異常だったと思う。このあたりも妥当かと思うけど特にゲイロードは怪我のリスクがとても高そうなので格上げしても実施する人は少なそうな気はする。

 

これら全てが採用されるわけではないしこれらとは別の要素が追加される可能性もある。体操競技を発展させなければならないという意図は十分理解しているが、選手の身体にムチを打つようなルール改正は行われてはいけないと思う。スポーツの意義は「体を動かすという人間の本源的な欲求にこたえるとともに、爽快感、達成感、他者との連帯感等の精神的充足や楽しさ、喜びをもたらし、さらには、体力の向上や、精神的なストレスの発散、生活習慣病の予防など、心身の両面にわたる健康の保持増進に資するものである。(文科省スポーツ振興基本計画 1総論より)」とあるしこの範疇を超えないルール改正になることを切に願う。