一人静かに内省す

日本男子を中心に体操競技応援中!体操競技について思いのまま綴っています

川上翔平選手の鉄棒のひねり技はどの画角が最適か

体操競技の試合は生で観戦するのが一番だと思っているが、男子の場合計6種目あり、器具配置や座席の位置関係によって演技や技が見づらいということは必ず遭遇する出来事である。その場では見えなかったとしても、配信映像やテレビの録画を見直すことでそういった事態を補完している。演技を確認するという意味だけでなく、単純にその選手の特定の演技の特定の技を堪能するという動機で何度も演技を見直すことがある。そういった演技や技を繰り出す選手は本当に存在そのものがありがたく、なんなら別途追加料金を徴収してほしいまである。

個人的にだが、現状その筆頭が川上翔平選手の鉄棒のひねり技である。具体的にはアドラー1回ひねりとエンドー1回ひねり大逆手である。正直この2技(正確には3技)をずっと繰り返した演技を披露していてほしいくらい彼のひねり技はとにかく絶品である。しかしテレビで放送される画角ではいかんせんその良さが伝わりきっていない。いくら公共放送とはいえこんなことが許されていいのだろうか。

こちらは今年行われたユニバーシティゲームズの種目別決勝前に本人が投稿した動画。

奇抜な色で纏われた練習会場で鮮やかなひねり技を繰り出す川上くんのコントラストが大変素晴らしい。彼の実施が素晴らしいのは当然だがこの映像は現地に帯同したスタッフが撮影したものと思われる。関係者が撮る映像ならではの臨場感があり、ひねり技の高さと角度の正確さがわかりやすい動画である。私はこのような画角で彼の鉄棒を愉しみたいのだ。もはや一種の芸術作品と見紛うレベルの映像だが残念ながらこれはあくまで練習動画である。試合での演技と練習の演技を一緒にしてはいけない。

川上選手のひねり技が最も映える画角で撮影された試合映像を探してみた。シニアデビューして2年目な上、コロナによって国際試合に出場する機会がまだ少ない選手だが、幸いにも試合映像が潤沢でお馴染みの徳洲会体操クラブに所属している。彼の素晴らしい鉄棒の動画は思ったより多く存在した。

その前にまずは悪い例。今年の2月にコトブスで行われたワールドカップ決勝の映像。

鉄棒の正面から撮影された画角。バーに対する倒立の角度はわかりやすいが、ひねった位置や車輪のどの位置で倒立にはまったかがよくわからない。車輪の軌道がわかりづらいので放れ技もわかりづらい映像になってしまっており、鉄棒の画角としてはかなり良くない映像といえる。画面の高さも足りていないのでカメラが上下してしまって映像の揺れが気持ち悪く感じるところも悪い点。

 

続いてこちらは8月に行われたユニバーシティゲームズの団体決勝(予選)の映像。

テレビ中継でよく見る画角。先ほどよりも斜めの位置にカメラがあるので見やすくなったが、同じく鉄棒の正面に近い状態のためひねり技の角度はわかりづらい。

 

そしてこちらは2022年の国体近畿ブロックの映像。

練習動画などでよく見られる鉄棒の真横からの画角。放れ技の高さや終末技の軌道がわかりやすい動画だが、やはりひねり技の角度は少しわかりづらい。選手本人が自身の演技のチェックをする分にはいい角度なのかもしれないが、川上くんのひねり技を愉しむという点からは向いていない角度といえる。

 

では、これらを踏まえて他の角度から撮影された映像を見てみる。まずこちらは2022年NHK杯の映像。

会場は東京体育館でおそらく2階席の後方から撮られた映像かと思う。俯瞰の映像で真横から斜め30度くらいの角度か。どちらかというと放れ技のダイナミックさが目立つ。ひねり技もよくわかるがひねりの角度の高さは意外とわかりにくい。

 

続いてこちらは今年2023年のNHK杯の映像。

同じく東京体育館だがこちらは鉄棒とは逆サイドの観客席から撮影されている。鉄棒の真横に対して斜め15度くらいか。逆サイドからなので距離は遠めだがちょうどいい高さであり、ひねりの角度がかなりわかりやすい。ただ延長線上に観客席があるため、鉄棒を回る川上くんの姿と観客が被ってしまっているのが少し残念。しかもたまたまとはいえ客席が撮影許可席で派手色のビブスを着用しており目が散る。しかしこれは仕方がない。

 

続いてこちらは今年2023年の全日本決勝の映像。

先ほどのNHK杯の映像と画角は一緒だが座席の関係なのか、若干寄り気味の映像。川上くんはひねる位置がかなり高いのだが、ひねるタイミングの体の位置がちょうど2階席の手すりの部分と重なっているので、これだけで上の映像より見やすくなっている。エンドー1回ひねりの実施、最高すぎる。

 

続いてこちらは今年2023年の全日本種目別選手権予選の映像。

会場は代々木体育館。東京体育館よりも低い位置なのがわかる。角度が少し浅めで鉄棒の真横に対して10〜15度くらいか。鉄棒側からの撮影のため奥の平行棒や審判が被るので目が散りがち。画角がとてもいいだけに残念。アドラー1回ひねりの倒立がここまで垂直なの凄すぎるけど、このような実施になると停滞で逆に減点されてしまうのか?サルト降り珍しい。

 

続いてこちらはうってかわって2022年の秋に実施された徳洲会でのチーム対抗戦。

会場は徳洲会体操クラブの練習場。鉄棒とほぼ同じ高さで真横から10度くらいの角度からの映像となっている。高さ、角度申し分なく川上くんのエンドー1回ひねりが映えまくっている。強いてあげるならば映像の明度かな。照明が暗めで見づらい印象があるが、撮影を想定した場所ではないのでこればかりはしょうがない。というか対抗戦とはいえそもそも試合ではないか。

 

続いてこちらは2022年の種目別選手権決勝の映像。

こちらは東京体育館だがなぜかかなり低い位置からの映像になっており、鉄棒とほぼ同じ高さの目線となっている。さすが関係者のなせる技。鉄棒側からの映像のため観客も遠いため技が見えやすい。角度は浅めで鉄棒の真横に対して10度くらいか。さすが優勝の演技だけあって何もかもが良い。

 

そしてこちらも同じく2022年種目別選手権決勝の映像。

縦長の映像なのでわかりづらいが、これはおそらくAbemaの配信の映像。配信ならではの鉄棒を見上げたような画角。いい映像に思えるが先ほどの動画と同じ演技のため比較しやすいが、ひねり技の角度は意外にもわかりづらい。ただ臨場感はかなり高いように思う。

 

以上を踏まえて川上くんの鉄棒は器具と同じ高さでかつ器具に近い位置、真横から10度くらいの角度の撮影が最もひねり技が映える結果になった。観客はなるべく暗めの格好をしているとさらにベスト。あとユニフォームの色は赤などの暖色の方がさらに良いような気がする。

川上の鉄棒、上から見るか下から見るか。正解は真横斜め10度からでした。日本放送協会の関係者に届きますように。

※すべて私の独断と偏見によるものです。