一人静かに内省す

日本男子を中心に体操競技応援中!体操競技について思いのまま綴っています

最後の知らせが無いまま選手が引退した

「もう少し頑張ります」という言葉に国体やジャパンオープンまで競技を続けるという意味はおそらく含まれていなくて、種目別選手権が風哉くんの最後の大会になるんだとツイートを見てなんとなく察した。ゆかにエントリーしたメンバーと風哉くんの持ち前の実力を鑑みると決勝に進むのは少し難しいと感じた。

予選は観戦することができなかったが本人が棄権したという情報を知った。現役最後になるかもしれない試合で棄権。直前で何か怪我があったのだろうか。何もわからないまま翌日の決勝を迎え、白熱した試合が終わり代表選考の発表は大いに盛り上がって大会は幕を閉じた。それから数時間後、今大会を最後に現役引退する旨の投稿がSNSにアップされた。

私が最後に風哉くんの演技を見たのはどれだっけ。全日本の予選か。6種目全演技の一部始終を網羅することは出来なかったけど、跳馬と鉄棒の演技は良かったなあ。あん馬は席の関係でよく見えなくて、ミスが続いてしまった演技になったことを試合後に友人から聞いたんだ。予選は敗退し各種目上位6位にもエントリーされなかった。次は種目別か、今年はビデオ審査だしあん馬は見れそうだなと思った気がする。

SNSにはファンや仲間、関係者たちから労いの言葉が飛び交っていたがあまり頭に入ってこなかった。「めちゃくちゃ悔しくて、まだまだ続けたい気持ちでいっぱい」という言葉を何度も反芻した。

ジュニアの頃から大きく注目されながらも中々実力を出し切れず27歳でようやく代表入りした千葉くんへの祝福、稀に見る大接戦の超絶ハイレベルな鉄棒決勝の余韻、明らかに不調でこれまでに見たことがないような演技をした航くんへの心配は勿論頭の中にあるけど風哉くんが引退するという事実がそれらを凌牙して頭の中を支配する。

私も大人なので本人が悔やみながらもなぜ引退という道を選ばざるを得なかったかは理解しているつもりである。所属先のセントラルスポーツは奨励社員という形で競技のみを行う体操選手を受け入れている。かつては2〜3名しか所属していなかったが東京五輪を数年後に控えた2016年にチームを発足した。新型コロナウイルス禍で東京五輪は延期しながらもなんとか開催したが、その後汚職も相まってマイナースポーツに対する世間の目は厳しくなり、自社自体もコロナの影響を大きく受けたにも関わらず今日現在選手6名スタッフ4名が在籍している。

セントラルスポーツは上場企業で多くの部署が存在しており、当然各部署や事業毎に予算が割り振られてると思うが体操競技部もその対象の一つであろう。東京五輪後にまもなく複数名選手が引退したこと、前年度は新入社員がおらず引退選手がいなかったことを鑑みるとおそらく選手は6名しか在籍できないお財布事情であることが推測される。そして今年度1名新入社員が入社した。ナショナル選手を除いた残り3名のうち、主要3大会で最も成績の低い選手に対し退社勧告をされていた可能性がある。(おそらく入社時点でそういった契約であることは説明されていただろうけど)そして風哉くんがその対象になったと考えるのが自然だなと感じた。

東京五輪で体操に対する熱が再燃してたくさんの選手を覚えた中に風哉くんがいた。過去の映像で演技を知ってSNS投稿で人柄を知ってあっという間に大好きになった。その中でも特に風哉くんの良さを強く感じたのは去年の夏頃にたまたま見つけたこの記事である。(当時Yahooに記事が上がっていたのにいつの間にか消えていたけど素晴らしいタイミングで記者の方がnoteに再投稿してくださった)

深夜だったけど夢中で目を通した。もっと応援したい選手だなあと素直に思って次の試合までが待ち遠しかった。

風哉くんの鉄棒好きなんだよなあ、アドハーとアド1の倒立のはめ方が最高で着地も腰が高くて美しくてさ…あん馬は腰が伸びた綺麗な旋回でスピーディーで、その中でもショーンが絶品でさ…。見れないんだ、もう。順大の体育館で練習することもないんだと想像したら勝手に涙が出てきた。私って私が思ってる以上に風哉くんの演技が大好きだったんだ。

長年応援してたファンの皆さんが労いの言葉をかけているのを多く目にしたけど本当に素晴らしすぎて、見習わないといけないなあ。これからの風哉くんの人生も応援するのがファンとして正しい様なんだろうけど、風哉くんの体操がもう一度見たいなあってずっと思ってる。存在を知ってたかが2年も経過していないくせに情けないファンだなあと自分で自分に呆れる。体操競技を応援しているとよく出くわす、「あれが最後の演技だったんだ」どころかどれが最後だったかも思い出せない奴が何を言ってるんだっていうね。