一人静かに内省す

日本男子を中心に体操競技応援中!体操競技について思いのまま綴っています

パリオリンピックに向けた日本男子体操の代表選手選考ルール

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2023年のシーズンが終わり、とうとう来年のパリオリンピックに向けて始動という雰囲気がにわかに漂っているが、日本体操協会よりパリオリンピックの代表選考ルールが公表された。東京オリンピックとは異なりパリオリンピックは団体5人のみが代表メンバーという点で世界選手権と変わらないが、諸事情により大会数が減少したことで選考ルールにも当然影響が出た。日本男子は非常に層が厚く、国際試合に出れば必ずメダルを獲得するという競技力の高さからか元々選考ルールは複雑なのだが、考察も踏まえながら私なりに少し噛み砕いてみる。日本体操協会の公式サイトに掲載されているPDF(男子体操競技選考方法)を元に説明する。

選考会は4月の全日本選手権と5月のNHK杯が対象で、どちらも2日間の開催なので計4試合の結果を元に代表が決定する。

 

 

橋本大輝選手の内定

始めに、選考会を待たずして代表が1名内定した。この表の中では直接名前が掲載されていないので少し分かりづらいが、前回のアントワープ世界選手権の個人総合優勝者が内定者となっている。要するに橋本大輝選手のことだ。じゃああと残り4人を決めよう、という単純なものではなく橋本選手も大会には出場する権利がありほぼ間違いなく出場することと、橋本選手の大会での結果も選考ルールに影響があるので非常に重要。

橋本選手の内定の要因は以前こちらの記事にも書いたが、個人総合の優勝者という実績以上に彼を中心に団体戦に臨むという意図からだと考えている。本人としてはしっかり選考会を通過して代表になりたいという思いがあるかもしれないが、日本のエースの精神的負担を少しでも軽減するという理由からの首脳陣の判断だと推測している。(以下内定者は橋本とする、敬称略)

 

全日本個人総合選手権

予選

予選出場資格者は個人総合枠で72名、種目別枠が6名×6種目で複数種目に出る選手もいるが最大で36名、トータルで最大108名の出場が可能になる。"個人総合選手権"という大会名だが種目別枠というものも存在しており、個人総合の映像審査で漏れた選手の救済措置のような枠だが、代表選考としては得意種目に絞って選考会に臨むスペシャリスト選手のエントリー枠ともいえる。

アップ3分、演技時間1分半、採点1分半で1演技に最低一人6分かかるとして、そのまま一人ずつ演技を行うと6演技×6種目×108名で休憩なしで3,888分=64時間以上かかる計算になる。これはどう考えても不可能な状況なので、実際は大きく2班に分けて6種目同時進行で演技を行うローテーションで進行している。まず個人総合枠36人ずつで1班と2班に分かれ、6人1組として各班6組で回るのだが、種目別枠の各種目6名(最大36名)も1班に割り振られている。しかし72名も同じローテーションで回れるわけがないので、昨年同様3班として2班終了後に別枠のローテーションを設けると思われる。

2頁目に2班シード選手の記載があるが、ここに割り振られた選手は予選をパスした場合のみ決勝のみの出場も可能と思われる。ただ後述するが代表選考の対象は予選も含まれるので橋本以外は出場しないメリットは皆無であり、今のところそれを行った選手は見たことがない。なのでシードといっても実際は2班に割り振られるだけのシードを意味する。当然先に行う1班より後に行う2班の方が点が出やすい傾向があるので2班はナショナル選手など比較的代表に近い選手が割り振られている。

【2024.3.25 追記】

種目別枠の選手は3班ではなく1班の7組目としてエントリーされる模様。1班は7ローテーションでまわり、間に休憩を挟むローテーションとなっている。前年と前々年はユニバーシティゲームズの枠により参加者が多かったと思われるが、今年はそれがないため2班編成になっている。以下、日本体操協会公式サイト参照。

第78 回全日本体操個人総合選手権 男子予選

 

決勝

予選の結果を踏まえて個人総合得点上位29名+橋本が決勝に進むことができる。それ以外に上位29名から漏れた選手と6種目を行なっていない種目別枠の選手の各種目の得点を並べて各上位6名も決勝に進むことができ、この枠に該当した選手は全日本決勝からNHK杯終了時まで一律「種目別枠」に位置付けられる。個人総合の大会順位は予選と決勝の2試合の得点の合計で決定する。決勝については前年と特に変わりなし。

予選で上位29名から漏れてしまうと決勝に進むことができず、さらにはNHK杯にも進むことができない。種目別枠として残れば試合に出ることはもちろんできるが、出場種目が限られてしまうので点数を積み上げるのが難しくなってしまう。つまり個人総合にエントリーした選手は上位29名の枠に入ることが代表の最低限の条件になるといえる。

 

NHK杯

1日目

参加資格が載っているが、全日本選手権の決勝進出者と同じである。

2日目

前年まではNHK杯は1日しか開催されていなかったが、2日目があることが今回の大きな変更点。まず1日目の個人総合上位17名+橋本のみが2日目に進出することができる。それ以外に「個人総合出場者を除くN杯1日目終了時点においてチーム貢献得点が高い上位選手3名」が出場できる。これまでは上位○名というわかりやすい指標だったが、急に「チーム貢献得点」という特殊な文言が登場した。

チーム貢献得点とは平たくいえば選手を組み合わせたときに総合得点を上乗せしてくれることを指す。具体的な数字で説明します。

 

順位はNHK杯1日目終了時点の順位、得点については本来は全日本の予選決勝とNHK杯1日目の計3試合のうちの得点が高い2得点の合計だが、わかりづらいので2得点の平均点と仮定。

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例えば上位5名の選手を選出するのであれば、チーム得点は以下のようになる。

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団体戦は5人のうち3人が演技して3人全員の得点が加算されるいわゆる5−3−3制である。各種目上位3人の得点(グレーで塗りつぶされた箇所)を合計すると262.9点となる。

次にこちらは4位のCを6位のEに変更した場合。

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合計点が263.6点となり0.7点底上げされた。この得点差がチーム貢献得点である。このような計算方法で橋本+全日本選手権個人総合通過者3名を含んでチーム貢献度を計算した際に高い得点となる上位3名NHK杯2日目に進むことができる。ちょっとわかりづらいのでこちらも具体的な数字で説明します。

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GとHは種目別枠で全日本選手権決勝(NHK杯1日目)に参加した選手と仮定。橋本と全日本選手権個人総合通過者3名を含んでのチーム貢献度なので、GとHは出場種目がかぶっていないのでお互いを補完し合ういい組み合わせだが、この2人を含めてしまうと残りが橋本+個人総合枠の選手が2名となってしまうので条件に合っていない。なぜこの条件があるかという話だが、Gと Hを組み合わせてしまった場合、あん馬で得点を稼ぐのが橋本を含めた残りの3名だけとなってしまう。団体決勝は5−3−3制なので3人のみの出場なのだが、予選は5人中4人が演技して上位3人の得点が加算される5−4−3制なので、本来4人演技できるはずなのに3人の演技で予選に臨まなければならないという負担が生じてしまう。もちろん怪我によって想定した種目に出られないということもあり得るので、そういったリスクを少しでも防ぐためにあくまで種目別枠は1名に限定していると推察している。

さて、このGとHを含めた場合のチーム得点例は以下のようになる。

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個人総合枠だけで算定するよりも高いチーム得点となり、この2ケースを比較すると黄色チームの方が高い得点をとれる計算になる。(チーム得点が最大になる検証まではしていないのであくまで例です。)この例では2名のみとしたが、このように多くの組み合わせの中で上位に浮上する3名のみが2日目に進出できることになる。つまりこの計算を1日目終了時点で行うことになるのだ。とても大変な作業ですね。とはいえこの時点で実質20名に絞られる。

2日目終了後の得点を持って代表が決まる。また、NHK杯の順位は全日本選手権の2日間とNHK杯の2日間の計4試合の合計得点で決まる。最終結果の順位なんて橋本以外気にするやついるんか、と思いたいところだが代表選考に大いに関係がある。

 

日本代表選手選出基準

代表の選出基準は表の2頁目の表1のとおり。

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まず最終順位の上位2名が自動で決定。そしてチーム貢献度枠は2名だが、そのうち1名はNHK杯最終順位が10位以内の選手に限定される。橋本が11位以下になることは考えにくいので2を除く7名から選出される。これは前述した予選でのリスクを踏まえた条件だと推察する。そしてもう1名はNHK杯の順位は関係なく選ばれるが、もちろん上位の選手が選ばれる可能性もあり得る。

そして最終決定のチーム得点の計算は、橋本以外は4試合のうち各種目得点が高い3試合の得点の平均が対象になる。個人総合合計点は関係なく各種目個別での計算である。自動的に決まる上位2名の選手の得点もこれに該当するので、最終演技者の演技が終わるまで確定した数字は出ないことになる。とんでもなくおそろしい作業になることが予想されます。

では橋本はどうか。橋本も同じく4試合のうち高い得点の3得点を採用するのだが、すでに内定しているので万が一試合に出場しないことも想定される。その場合は世界選手権での得点が採用されることになる。その内訳がこちら。

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そしてもう一つ重要な条件がある。橋本選手が4試合出場した場合でもチーム得点を算出する際にこの得点を下回った種目がある場合は、この得点が採用されるということだ。

先の例に置き換えてみる。跳馬が14.5、平行棒が14.7で参考スコアを下回っているので、橋本の2種目の得点が上記のものに入れ替わる。その場合のチーム得点をがこちら。

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なんと黄色チームの得点を緑チームが上回ってしまった。橋本の内定はすでに決まっているのに橋本の得点によってチーム貢献度に影響が出てしまった。これは内定者の橋本に大きなミスが出てしまった場合、ミスをした種目の貢献度点が有利に働きすぎるのを防ぐ役割がある。このケースでは跳馬がそれにあたるわけだが、今の日本の跳馬の競技力と橋本の持ち前の実力を鑑みると橋本が跳馬に出場しないということは考えにくいので、結果妥当な組み合わせになったともいえる。(ちなみに上記例はNHK杯2日目のチーム貢献枠選出の算定であり、最終決定のチーム得点の算出は2頁目の表1の条件に当てはまる組み合わせでないといけないし、計算対象も3得点となる)繰り返すが、橋本がNHK杯の2日目を1位で迎える可能性はかなり高いので、内定者である橋本の鉄棒の演技が終わるまでチーム貢献度の計算はできないのだ。もう一度言いますがこれは本当に大変な作業が強いられることになります。

ソフトか何かを使って算出するだろうとはいえ、それを扱うのは人間である。過去に計算ミスをして代表発表を誤るという恐ろしい事態が発生したらしいが、こういった複雑な選考ルールが大きな要因だと考えられる。そういった過去を踏まえて、全日本選手権決勝終了時点で橋本を除いた上位1名が代表決定するなどして少しでも得点計算の負担を軽減するのかと想定していたのだが、最後にすべての計算を行ってすべての代表を決めるという過酷な道を選んだのである。

これまではNHK杯は1日のみで、その時点で個人総合枠を2名決定し残り2名を翌月の種目別選手権で決定するという流れだったのだが、協会の財政難により種目別選手権を独立した大会として実施することが難しくなった。その結果このような選考日程になったのだが、財政難はあくまで協会のこれまでの活動による結果であり、それを今の現役選手の代表選考会に大きく影響させてしまったわけだ。これまでより早いタイミング(天皇杯終了後など)で代表を決めるといった大きな変更はせず、計算作業の負担を減らすためのルール作りを避けることである種の誠意を示しているのかなと個人的に感じた。そして4試合を選考の対象とすることで、結果的により安定感を重視した選考方法となった。

 

最後に

5−3−3制である以上ある程度種目に特化した選手が求められるが、予選や万が一のリスクを踏まえて個人総合に強い選手の比重が高い選考ルールになったのは、過去の世界選手権が影響していると思われる。前回の世界選手権では三輪選手が怪我をしたことで選手交代やエントリー変更があったのだが、貢献度枠の一人である千葉選手が個人総合としての力が大きかったことで、さまざまな点でチーム全体のリカバリーに繋がっていた。こういったことを踏まえるとこのような選考ルールになったことは自然なことなのではと思う。ただ、負担が大きいので橋本選手の6種目出場は避けたいのだが、なにぶん本人の全種目のレベルがかなり高いので、そのあたりはこれまで同様このルールでは調整ができない。正直組み合わせ次第としか言いようがない。

対象試合が4試合になったことが今までと大きく違う点で、最後の試合の順位も影響することを考えると種目を絞って大会に臨むのはそれはそれでリスキーといえるので、やはりスペシャリスト以外は個人総合での代表入りを目指さざるを得ないかなと思う。その上、4試合中3試合の得点が計算対象なので今まで以上に安定感も求められている。そしてどちらの大会も2日間で6種目×2=18演技を実施することになるので体力面が一番の課題になると思われる。

その中でも『大きなミスをしないこと』と『得意種目では確実に点を稼ぐこと』が特に大事になるかと思う(今までもそうだったけど)。

 

 

もちろん協会に答え合わせをしたわけではないし完全に正しいという保証はないですがわりと正確だと思っているので、この記事を見てより理解できたという方が増えれば幸いです。今回の記事のタイトル作成が難しかったのでAIにお任せしてみたんだけどわりと無難だった。

【記録用】2023年谷川航選手の演技構成

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今年試合で行った演技の中で最も高いDスコアの演技構成を記録しておく。完全独学の浅薄知識によるものなので絶対に正しいという保証はないです。技名も正式名称以外に通称も混ざっている。

 


ゆか(全日本団体選手権(3:27:18〜))

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春先の選考会までは以前の記事の構成だったが9月に行われたアジア大会からこちらの構成に。1節目をビッグタンブリングの組み合わせに変えて組み合わせ加点を取っており、5節目のひねり技の組み合わせを伸身前宙の組み合わせに変更している。今年の始めくらいに伸身の後方2回宙返り系を練習していると話していたが、得意な前方宙返りの組み合わせにシフトチェンジした模様。ビッグタンブリングが4技になったけどそれでも0.1しかDスコアを上げられないという現ルールのもどかしさよ。全体的にまだ余裕を感じられるけど、過去に前方2回ひねり〜前方2回宙返りに挑戦していたこともあるので種目別のチャンスがあれば挑戦するのだろうか。


あん馬(全日本個人総合選手権決勝)

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書き出してはみたが正直自信はない。Dスコア計算は合っているが技自体もそうだしカウントしている技が合っているか全く自信がないので、大体こんな感じの構成かな、程度で捉えてほしい。元々は2技目にC難度の逆交差倒立を入れていたが冬場に体調を崩し練習を積めなかったということで、技を抜いて春先の選考会に臨んでいた。結局NHK杯以降あん馬の演技を披露する機会がなく、元の構成を戻せているかどうかは不明(倒立技は得意なので現在は戻していると思ってはいるが)。


つり輪(アジア大会種目別決勝)

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昨年と変わらず。春先の選考会では体調不良の影響で2技目のけ上がり中水平を抜いていたがアジア大会で元の構成に戻していた。あん馬といいつり輪といい得意技を抜いていたのでかなり心配だったが無事戻してきてとても安心した。ホンマ十字の肩の位置、9技目の倒立の処理が昨年よりも良くなっている(私目線)。今年始めに十字倒立に挑戦したいという話をしていたが、体調不良の影響もあってか今シーズンでは実践投入はしていない。


跳馬アジア大会種目別決勝)

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従前から変わらず。リ・セグァン2はここぞという時にやってくるイメージがあるがやはりアジア大会で挑んできた。去年は中々披露できず、仕上がりきっていない印象だったが今年はかなりいい実施で結果も伴った。シーズン最後の全日本団体はいつもブラニクを跳んでいたが今年はリ・セグァン2を実施。手をつくミスにはなったが来年に向けての攻めの姿勢を感じた。


平行棒(全日本個人総合選手権決勝)

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なんとか今年の映像を見つけ出すことに成功した。構成は従前から変わらず。アームツイストの実施が改善している印象(私目線)。


鉄棒(アジア大会種目別決勝)

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従前と変わりはないがフル構成はこちら。春先は体調不良の影響でカッシーナを抜きヤマワキ(C)にしていたがアジア大会以降はカッシーナに戻していた。トカチェフの連続が出来なかったり、順手背面車輪の後がシュタルダー処理、終末技を月面にしたりとDスコアを落とす場合もあるが、アジア大会の決勝と全日本団体はこちらのフル構成をやってきた。今年は全日本予選、決勝、NHK杯アジア大会予選、種目別決勝、そして全日本団体の計6回全てで大過失がなく全日本団体ではチームで一番高いスコアが出ていた。今やすっかり得意種目☺︎


新しい構成はゆかのみ。あん馬、つり輪、鉄棒は体調不良の影響もあって技を抜いており選考会ではDスコアを大きく落として臨んでいたが、9月のアジア大会で概ね戻していた。いわゆる種目別用の演技構成というのは跳馬の2本目のロペスのみ。来年はいよいよ五輪イヤーだけど何か変えてくるのか、はたまた現在の構成をさらに磨きをあげるのか、どうしてくるでしょう。怪我なく健やかなオフシーズンを過ごせますように。

同時に開始する演技を見る方法

わざわざ四日市市のホテルを取ったのは、団体戦の日程が土曜日が女子の試合で日曜日が男子の試合だったからだと記憶している。それがいつの間にか日曜日に男女同日開催に変更されていた。私は今までインカレやシニアを観戦したことがないので、同日に男女の団体戦が行われる試合は初めての観戦だった。これまで全日本選手権NHK杯で同時6演技というのは経験してきたが、今回はそれを超える同時8演技の試合となる。体操観戦自体は非常に楽しいという思いは当然あるとはいえ、同時6演技でもまともに観戦できていないのに同時8演技とは骨が折れる。

以前から疑問だったのだが、これまで長く体操観戦をしてきた方々はこの困難をどう乗り越えているのだろうか。昨年の全日本選手権予選から現地観戦デビューしたがこればかりは未だに克服できない。試合前日のギリギリに確定した試技順のPDFデータを慌ててコンビニで出力して、選手の名前、背番号を睨めっこしながら可能な限り頭に叩き込むが碌に覚えられた試しがない。いざ会場に赴けばいつの間にか演技が始まり、そしていつの間にか演技が終わっている状況で、常に右往左往であたふたする始末である。選手の演技、一瞬だけ得点が表示される電光掲示板、スマホでSEIKOのリザルト速報をチラ見しながらこれらを同時に8種目確認するのは人間の能力として可能なものなのだろうか。しかしSNSを覗けば現地でしか確認しようがない具体的な演技構成や実施内容を細かにポストされているのを度々見かける。演技をしていない選手らの様子を綴っているポストもよく見かけるが、この人たちは超魔術でも使っているのだろうか。家でソファーに座りながらのくせに誤字だらけの投稿をしてしまう私には到底会得できそうにない技術である。

とにもかくにも8演技同時実施という至難は無情にも訪れてしまった。1班の選手は個人的にあまり名前や演技を把握していない選手が多かったこともあり、新しい発見がありながら比較的ゆとりをもって観戦ができた。ただ問題は2班である。男子だけでも注目選手だらけなのに女子の注目選手も多く存在していた。1班を観戦して分かったことだが、男子と女子は演技時間が微妙に違うためローテーションがズレるのだ。おそらく女子のゆかの演技が1番時間がかかるかと思うのだが、それに合わせて男子もローテーションを行うと、元々女子より2種目多いため時間がかかってしまう。そのため男子は男子、女子は女子でそれぞれで演技終了時間に合わせてローテーションを行っていた。効率よく運営するにはこのように行うのがベストだというのは重々分かっているが、実際観戦する立場となると非常に困る。そして今回の会場の音響が悪かったのか、元々の原稿がそうなっていたのかは分かりかねるが、種目のローテーション、演技開始のアナウンスがまるで聞き取れなかった。男女8演技同時実施となるといちいちアナウンスするのが難しいからかは知らないが、アナウンスがないと何がどうなっているかが殊更わからなくなる。

なんとか目当ての選手の演技は見逃さないようにと集中しているつもりだが、知らない間に演技が始まっていたり、知らない間に演技が終わっている。私はどちらかというと男子の器具側の席に座っていたが、男子ですらまともに観戦できていないのに女子に至ってはかなり壊滅的な状況だった。いつの間にか芦川うらら選手は平均台の演技を終えており、岡村真選手も段違い平行棒の演技を終えていた。宮田笙子選手に至ってはまともに一部始終が確認できた種目はない。悲しい。私は何をやっているんだろうと思ってしまう。

そう思っているうちに男子も演技が進む。いつの間にか津村涼太選手はあん馬の演技を終えており、田邊友唯選手や橘汐芽選手は演技のほどんどを見逃した。しまいには橋本大輝選手のリューキンも見逃した。国内戦では昨年の全日本決勝以来の成功だったのに。嗚呼。私はこの2年間を経て何をやっていたんだろうとまた思う。

そんな中、最終ローテーションとなった。男子は優勝候補の徳洲会体操クラブがかなりの点差をつけてトップに立っており、以下順天堂大学ジュンスポーツクラブ、セントラルスポーツの順で並んでいた。推しである谷川航選手の鉄棒の演技を無事見届け、最終演技者を残すところまできた。すると航くんは何故か選手の待機場所には戻らず鉄棒とゆかの間にとどまっていた。理由はわからないが、目の前で他の選手の演技を見届けたかったのだろうか。そして2組の最終演技者、橋本選手のゆかの演技が始まった。会場の観客と航くんは橋本選手に注目、1技目の大技リジョンソンを成功させた。すると1組の最終演技者である杉野正尭選手が鉄棒のマットの上で手を上げた。

出た。よくある注目選手が同時に演技をするやつである。

代表選考会の大一番では放送が天下のNHKということもあってか、あえて演技開始時間をズラすことがあるが今回は団体選手権である。点差は歴然、代表も決まらないし、しかも今回は地方ローカル局の配信である。2班の演技開始時間が既に10分押していたことを鑑みてもこの2選手の演技開始をズラす理由はない。世界選手権個人総合金メダリストの橋本大輝選手のゆかと今大会の優勝を決める演技となる杉野正尭選手の鉄棒が同時に行われた。

航くんはそのまま鉄棒とゆかの間に鎮座していた。そしてふと思い出す。何かのライブ配信での発言だったと思われるが、リスナーの「見たい演技が同時に行われる場合、どうすればいいか」という問いに対し、その選手のポイントとなる技さえ押さえればそれだけで演技を網羅できることになる、というようなことを弟の翔選手と話していた。さすが10年近く体操競技の第一線を走る選手は見方が違うなと感じた記憶が蘇った。橋本は最大のポイントであるリジョンソンは終わったので、あとは前半と最後から2番目に行われるひねり技の組み合わせあたりか。杉野は冒頭のペガン、放れ技の連続がポイントだろう。待機している航くんも明らかにどちらの演技も見たい様子だった。航くんはこの2選手の演技をどう見るのだろうか。

前方のひねり技の組み合わせを行う橋本、それを見る航、ペガンを成功させた杉野、それを見る航、後方2回ひねりを行う橋本、それを見る航、放れ技の連続を決める杉野、それを見る航、フェドルチェンコを行う橋本、それを見る航、ヤマワキを行う杉野、それを見る航…

 

 

え?なんか私の見方と変わんなくね?

全然ポイントを押さえておらず闇雲に頭を振っていた。私と一緒じゃん。それどころか橋本選手のゆか、杉野選手の鉄棒に加えてそのどちらにも注目できずキョロキョロする航くんという新たな見どころができてしまった。なんてこったい。結局私は3者とも中途半端にしか見ることができず、最後に伸身の新月面を決める杉野選手を見届けて試合は終わった。橋本選手のゆかは配信サイトのアーカイブ、杉野選手は徳洲会YouTube動画を確認することで補完した。

これで分かったのが複数の演技を同時に見るのは不可能だということだ。いくらオリンピアンであろうが、何度も世界選手権の代表になっていようが、リ・セグァン2の着地を止めることができたとしても、所詮は一介のホモサピエンスでしかないので、同時に2つの演技を見ることはできないものなのである。我々は肉食動物から逃れるために視野が広いウマやヒツジではないのだ。この2年間の経験を生かせていないわけではない、そもそも無理な話だったのだ。己の可能な範囲で演技を見届けることしかできないが、それが現地で観戦する私たちにできる精一杯の応援なのである。そんな当たり前のことに改めて気付かされ、また一つ学びを得ることができた。ありがとう航くん。

 

徳洲会体操クラブの皆さん、鯖江高校の皆さん、遅くなりましたが優勝おめでとうございます。

谷川航選手の体操『平行棒』

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今回の記事を起こすにあたって谷川航選手の平行棒の動画を探したが、思った以上に見つからない。全日本種目別選手権では毎回のように決勝に残っているし団体戦でも必ず起用されるほど非常に安定感がある種目なのに何故なのだろうか。現役体操選手の中では多い方だろうし探せばそこそこ見つかるのだが、個人的にこの演技が見たいという動画に限って配信限定だったりNHKでしか放送されなかったり、なんなら映像にすら残ってなかったりする。私の記憶の中に残っているのはそれはそれでいいのだが、彼に限らず素晴らしい演技は後世に残さなければならないと思う。様々な権利関係でこのような状況なのはわかってはいるが、時代が進んでも何ゆえスポーツの映像というのはインターネット上に残すことが難しいのだろうかと昔から疑問だ。

YouTubeで発見された過去の映像から演技構成を踏まえて辿っていく。まずは2015年全日本種目別選手権決勝の演技。

腕で支持する技は9技目の前方開脚5/4宙返り腕支持しかないがサポーターをしている。基本航選手は他の種目でもテーピングやサポーターなしで演技することが多いので少し珍しい印象。今よりも演技価値点は低いが演技構成のベースは今と変わっていない。当時18歳ながら6技目に行っているE難度のバブサーの熟練度に驚く。終末技は屈身ダブル。解説でシャルロについて触れているが未だに見たことがないので、今後何らかの形で目にすることができるといいな。余談だがこの動画を見ると、冨田さんにサポートされる航選手をリアルタイムで追うことができなかった後悔が湧き出てしまう。

次は2018年世界選手権予選の演技。

3技目の棒下ひねり倒立を新たに投入、終末技は今では得意技の一つである前方ダブルハーフにして難度を上げている。安定感が高い。髪が長い。予選とはいえ客入りの少なさに目がいく。

続いて2021年東京オリンピック団体決勝の演技。

3技目のアームツイストを新たに投入して難度を上げている。1技目のホンマの捌きが軽やか。バクダンの後の前振りの処理が大幅に改善されている。注目は終末技。本来ならば前方ダブルハーフを行うはずが、技をかける前に足を上げてゆかのマンナのような状態になる際におそらくいつものように溜めることができず、高さ不足になったことを瞬時に判断し咄嗟にひねるのをやめている。後ろに大きく1歩下がるような着地にはなってしまったが減点を最小限に抑える対応力は見事。転倒していれば銀メダルはまずあり得なかったと思うし、ここで踏ん張ったことが最終種目の鉄棒の成功にうまく繋がったのではと思う。

そして最新の映像、2022年世界選手権団体決勝の演技。

1年前じゃねーか、と思うがなんと2023年の映像が一つも見つからなかった。悲しすぎる。全日本選手権の予選の演技がとても素晴らしかったが映像にすらなっていない。悲しすぎる。

ルール改正によって棒下ひねり倒立の捌きが変更された以外、2021年から演技構成は変わらず。終末技の難度が下がったので何かすらの技を入れて構成を変えるかと思ったが、彼の場合ゆかと鉄棒のルール改正の対応が大変だったからか平行棒については今に至るまで何も変更箇所がない。演技全体の安定感と余裕が心地良い。静かな着地の音が良い。

おまけで個人的にお気に入りの2020年「Friendship and Solidarity Competition (友情と絆の大会)」での演技。

演技構成は従来通り。安定感が光る演技なのは特に他と変わりないが、単にこの試合で着ているユニフォームと髪型が好みなだけである。コロナ禍で声援のない静かな会場で刺さるような終末技の着地の音が響き渡るところもお気に入り。

ホンマの軽やかな実施、バブサーの熟練度、しっかりと足を閉じた前方ダブルハーフ、そして演技全体の余裕度が平行棒の魅力だとこれまで感じていたが、最近になってもう一つ魅力に気付いた。前方開脚5/4宙返り腕支持の捌きである。

この技は一連の動画からもわかるように2015年から一貫して終末技の直前に行っている。演技終盤に行っているにもかかわらず高さのある宙返りを行うことがよく解説から言及されている。もちろんそれは素晴らしいのだが、この技を同じ位置で行っているところが個人的に好み。

バブサーという棒端から棒端へ移動する技があり、E難度ということもあって多くの選手が取り入れているが始めから棒端に位置しているケースを除けば、技の特性上一旦棒端まで移動→バブサー→棒端から中央へ移動という流れにならざるを得ない。バブサーで棒端へ移動したあとはティッペルトで中央へ戻るというのはほぼ全選手に共通する演技の流れだが、バブサー前の棒端への移動は様々で、この前方開脚5/4宙返りで移動する選手が結構多い。日本のトップ選手はほぼこのケースで、宙返りを行った後支柱ギリギリの位置で支持し棒端に移動してバブサーを行うというパターンで、ルール上特に減点もない。ただ個人的な好みの話だが平行棒の技を行う際、技を実施した位置からあまりズレてほしくないという思いがある。たまに移行の際に大きく位置をズラす動きをする選手が見受けられるが個人的に好まない。バブサーやティッペルトのように移動ありきの技を除いて、基本的には技を実施した場所から不必要に移動してほしくない。終末技の前方宙返り系の技で着地位置が技をかけた位置から大きくズレる選手もいるが、あれも個人的に気になる。

実際この捌きが本人にとってこだわりなのか、はたまた只のクセなのか、もしくは本当は他の選手のように移動したいが出来ないだけなのかは分かりかねるが別になんだっていい。体操競技に限らずスポーツはルールを覚えると見るのが楽しくなるが、体操の場合Eスコアを覚え始めるとどういう動きに減点があるかということに着目してしまい、一種の粗探しのような感覚になってしまう。採点は審判が行ってくれるので、点数に直結するかはさておき個人的に好みの捌きを見つけることが競技を楽しむ上での体操ファン的ライフハックだと思っている。

最後に特に意味はないが平行棒と親和性が高い航選手の画像を4枚(厳選)貼っておく。

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全日本団体選手権のオーダー予想

来たる11/26に年内最後の国内大会である全日本団体選手権が開催される。団体戦はインカレやシニア、国体など国内でも様々な大会で行われているが、いずれも出場者全員が6種目実施し上位4〜5名の得点を合計する形式となっているのに対し、全日本団体は6人出場しその内3名が演技してその得点が全て合計点に反映されるいわゆる6-3-3制を導入している唯一の大会である。オリンピックや世界選手権の団体戦と同形式(オリンピックと世界選手権では5-3-3)の唯一の試合ということで選手の経験値を積むのにも絶好の機会といえる。

そして私はこれといった推しチームがいない。というかそもそも体操競技個人戦なのでどうしても個人にフォーカスしがちなのだが、6-3-3の試合形式の団体戦については大好物。あと全日本と名のつく国内大会は何かしらの選考会を兼ねていることが多いが、全日本団体はそういったものがなくシンプルに所属先同士の争いになるのでわりと精神的にラクな気持ちで観戦に臨めるという良さもある。

今年の出場チームはこちら。僅差で徳洲会体操クラブが1位通過となっているが、諸事情により全日本シニアとNHK杯の得点が混在している。これは2位のセントラルスポーツも同様で、そもそも大学チームは当然インカレの得点となっており複数の試合の得点が入り混じっているので得点自体は参考程度で、あくまで決勝のローテーションのための序列と捉えている。とはいえ所属している選手の実力的にも徳洲会体操クラブとセントラルスポーツが少し抜けており、次に順天堂大学日本体育大学が続くか、といったところかと思われる。というわけで個人的に団体戦の密かな楽しみ、オーダーの事前予想をする。(知識上徳洲会とセントラルのみ、敬称略)

 

徳洲会体操クラブ

昨年の覇者で今年も優勝候補筆頭のチーム。特長は豊富な選手陣。全日本種目別選手権を制したメンバーが複数いるので、6-3-3の団体戦を戦う上で最も戦いやすいチーム編成となっている。公式サイトに記載の選手のうち、術後間もない米倉を除いて11人の中から6人を選べる贅沢さを持つ。ちなみに前年の団体メンバーの一人であり世界選手権でも過去に金メダルを複数獲得しているカルロス・ユーロは、夏頃から拠点を母国に移しており現在徳洲会からは離れている。

まず難しいのが6人のメンバー予想。非常に悩ましいがまずキャプテン杉野と春木を軸にしていく。杉野はやはりキャプテンという立場、そしてあん馬と鉄棒で15点出せることと跳馬で5.6を跳べることを踏まえて絶対に選びたい。そしてつり輪と跳馬が強い春木については、団体戦では欠かせない安定感があることと、団体戦を戦う上でとても良い雰囲気を放つ選手ということを全日本シニアのYouTube動画を拝見して感じたので同じく絶対に選びたい。

残り4人。個人総合が強い選手を選びたいので、全日本シニアと国体で安定感があった松見とアジア大会の個人総合で銀メダルを獲得した北園はやはり外せない。先ほどの2選手の苦手種目をフォローしつつ全体の得点を底上げする力が2人にはある。

残り2人。この4人だとつり輪と平行棒が穴になってしまうので、昨年の大怪我のリハビリでつり輪を強化し、且つ平行棒が強い岡を選出。正直この5人で団体戦を戦えるが全日本団体はさらに1人出場できるのが嬉しい。スペシャリストを選出したいのでつり輪が強い髙橋をチョイス。鉄棒が強い川上と悩んだが、つり輪は失敗のリスクが小さいので髙橋にした(シンプルに髙橋くんの演技が見たいという私欲もあるが)。

というわけで杉野、春木、松見、北園、岡、髙橋の布陣と予想。次に各種目のオーダー。

ゆか▷杉野、松見、岡

ゆかはそこまで大きな実力差はないが、ここ最近好調な杉野と全日本種目別選手権で3位になった岡を選出。ポイントは松見がどこまでEスコアを伸ばせるか。

あん馬▷松見、北園、杉野

昨年と同じメンバー。6-3-3の団体戦あん馬で杉野がどの演技構成で臨むか。

つり輪▷岡、春木、髙橋

松見も強いが出場種目のバランスを考慮して岡。春木、髙橋で点を積みたいところ。

跳馬▷北園、杉野、春木

注目は北園。東京五輪以降、跳馬で中々点が出ていなかったがアジア大会ではEスコア9点台が出ていたので期待したい。

平行棒▷松見、北園、岡

全日本種目別で決勝に残ったメンバー。特に北園と岡は15点を出せるのでこちらも期待。

鉄棒▷松見、北園、杉野

あん馬と同じく昨年と同じメンバー。ラストはおそらくキャプテン杉野。演技構成は点差で変えてくるだろうが、個人的には団体戦でフル構成を決める杉野が見たい。

というわけで全種目穴がなく、やはりカロイがいなくてもめちゃくちゃ強い。杉野松見北園4種目、岡3種目、春木2種目、髙橋1種目で、全員4種目以下になり各選手に負担が少ないのでDスコアを上げやすいのもかなり有利。昨年の大怪我から復帰した岡が6-3-3で見られると思うと感慨深い。選出しなかった5人もかなり強くて、この5人でチームを組んで戦っても表彰台に登れそう。

 

セントラルスポーツ

優勝候補である徳洲会の一番の対抗チーム。所属選手は6人で団体戦においては常にギリギリを生きるセントラルだが、6人の内5人が世界選手権代表経験者で6-3-3を戦う経験値は圧倒的に高いのが最大の持ち味。

とても強い選手が揃っているが得意種目に偏りがあり昨年まで跳馬と鉄棒がどうしても穴になってしまっていたが、その両方を得意とする三輪哲平が今年入社。ところが三輪は9月に怪我をしており世界選手権を欠場。9/29時点で試合に出られないレベルの肩の怪我ということで、正直どの程度の怪我なのかは全くわからない。来年を見据えて出場を控えるということも十分ありえるが、個人的希望をこめて出場すると予想。

ゆか▷谷川翔、三輪、谷川航

実力差があまりなく誰でもいいような気がするので、他の種目のバランスを考えてこの3人を選出。Dスコアは特別高いわけではないのでEスコアで8点半ばを目指したいところ。

あん馬▷萱、千葉、谷川翔

あん馬が得意な3人。谷川翔がここで高得点を取れると大きい。

つり輪▷谷川航、北村、千葉

注目は千葉。世界選手権ではなぜか点が伸びず、それ以来の国内大会となるがどういった評価になるか。

跳馬▷萱、谷川航、三輪

萱がどこまでEを残せるかがカギ。谷川航と三輪が6.0を跳べばかなり優位に立てると思うが多分二人とも5.6だと思う。

平行棒▷千葉、谷川翔、谷川航

安定感のある3人を選出。

鉄棒▷千葉、谷川翔、萱

谷川翔がかなりDスコアを上げているので大きな得点源になると思う。ラストはもちろんキャプテン萱。

千葉航翔4種目、萱3種目、三輪2種目、北村1種目という布陣。萱は先日スイスの試合に出場したばかりなので少し負担を少なめに、三輪は肩の怪我ということで負担が大きそうな平行棒と鉄棒は得意種目だけどエントリーしないと予想。鉄棒は徳洲会ほど点が伸ばせないと思うので5種目目の平行棒時点でどこまでリードできるか。いずれにせよ三輪が加入したことで前年より徳洲会との差は縮まったと思うので、かなりいい勝負になるのは間違いないと思う。もちろん三輪の状態にもよると思うが谷川翔あん馬、千葉のつり輪、谷川航の跳馬でどこまで点を伸ばせるかが重要になりそう。世界選手権・アジア大会で得たものは大きいと思うので存分に活かしてほしい。

ちなみに三輪が出場しない場合はゆか跳馬はどちらも千葉、平行棒は千葉から萱に変更になると予想。

 

この2チームに次ぐと思われるのが順天堂大学日本体育大学順天堂大学は日本が誇るスーパーエース橋本大輝が在籍しているが、他の選手の実力を考えると優勝は難しいと予想。ただ最終学年で迎える最後の団体戦、他の学年の選手はキャプテン橋本に有終の美を飾ってほしいという思いが強いのではと思うので、その勢いを持って試合に臨んでほしい。昨年の世界選手権代表の土井陵輔が在籍する日本体育大学も同じことがいえる(土井はキャプテンではないが)。同じく4年生の近藤も強いのでこの2人がどこまで引っ張れるか。同じローテーションで回るので、学生らしい元気さを携えてお互いが相乗効果で盛り上がれば勢いで得点を重ねるということも十分ありえるので、期待したい。

 

表彰台は順天堂大学日本体育大学以外だと昨年3位の鹿屋体育大学、世界選手権代表の杉本が在籍する地元相好体操クラブが有力か。6-3-3の団体戦は一つのミスで局面が大きく変わる緊張感のある試合なので、6種目すべて終わるまで何が起こるかはわからない。選手にとってはプレッシャーがかかり大変かと思うが、こちらとしてはヒリヒリした見応えのある試合を観戦するのはワクワクでしかない。パリ五輪前最後の団体戦。さて、どうなるか…楽しみ!!