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日本男子を中心に体操競技応援中!体操競技について思いのまま綴っています

パリオリンピックで体操競技を見よう!④日本代表選手の紹介


前回に引き続き、パリオリンピック体操競技について紹介します。今回は日本代表選手5名について、注目種目を含めて紹介します。

 

日本はおそらく世界で最も層が厚い国なので、代表選考会は世界で最も過酷と呼ばれていました。そんな過酷な選考レースをくぐり抜けた5人は、まさしく””最強””といえます。

そんな代表選手を一人ずつ紹介します。(年齢はパリオリンピックの開会式が行われる7/26時点)

 

 

橋本 大輝

セントラルスポーツ所属の22歳。前回の東京大会で個人総合と種目別鉄棒で金メダルを獲得しています。そのあと3回開催された世界選手権すべてに出場し、合わせて金メダル4個、銀メダル4個を獲得した日本のエース。
アスリートというのは基本的に爽やかですが、その中でもすこぶる爽やかなルックスで、清涼感にあふれまくっています。

体操選手は寡黙で言葉数が少ないイメージがありますが、インタビューで垣間見える姿は雄弁で、年齢に見合わないその言語力から、橋本大輝・人生5周目説有り。

男三兄弟の末っ子ということもあり、若干我が強い一面が覗く瞬間がありますが、まったく憎めずむしろ愛らしいのが橋本選手たるゆえんといえるところ。

 

体操選手の中では長身な選手で、その長身を生かしたダイナミックな体操が大きな特徴。足先までピンと伸びた美しい姿勢も橋本選手の長所のひとつです。
Dスコアが高いながら、Eスコアも高得点を出せるのが一番の強みです。

 

得意種目は鉄棒。前述のとおり前回大会でも金メダルを獲得、昨年の世界選手権でも他を圧倒して優勝しており、今大会でも金メダル候補筆頭です。

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放れ技を5つ盛り込んだDスコア6.7の超高難度の演技構成。冒頭のアドラーハーフからF難度リューキンの組み合わせは圧巻です。その直後に行なっているG難度のカッシーナ、E難度のコールマンの安定感も素晴らしいです。

 

また橋本選手は跳馬も得意としています。

約3回ひねるので途中で軸がブレることが多い技ですが、橋本選手は跳躍が高く軸がまっすぐなため、マットの中央線に着地するお手本のような跳躍です。

 

 

岡 慎之助

徳洲会体操クラブに所属する20歳で、今チーム最年少。オリンピック初出場。
2年前の試合で跳馬の着地に失敗し、膝の前十字靭帯断裂という大ケガを負った経験のある選手です。それから長期間地道なリハビリとトレーニングを重ね、見事復活をとげオリンピック代表を勝ち取りました。

中学生時点で、ある程度素質を持った選手は強豪の高校へ進学、そのまま強豪の大学へ進学して、ある程度の実績があれば強豪の実業団に所属するというのがセオリーですが、岡選手は中学卒業後、社会人チームである現所属の徳洲会体操クラブに進路を進めた、体操選手としては異色の経歴を持っています。

どちらかというとクールな選手で、特に試合中はあまり表情が変わりません。表彰台に上っても笑顔を見せないこともあるので、顔がほころぶ姿を見ると嬉しくなります。
笑顔の姿の方が圧倒的に良いので、彼のクールな表情を見て、「ねぇ笑って…」とモーニング娘。の『抱いてHOLD ON ME!』歌詞を思い起こすこともしばしば。

 

技の捌きひとつひとつが美しく、日本らしい「美しい体操」を体現している選手。他の選手に比べ、Eスコアがかなり高く出るところが強さの要因。
また、着地が非常に強く、選考会では最も着地を止めた選手として表彰されています。

 

前述した膝のケガの影響から苦手種目のつり輪を強化したことで、日本の弱点を補うピースとなりました。

力技や倒立姿勢が美しく、高得点が出ています。終末技はF難度の伸身の新月面。実施するだけでもかなり難しい技ですが、着地をピタリと止めています。

 

岡選手が最も得意とする種目は平行棒です。

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真横からのアングルの映像で、岡選手の持ち味である倒立の美しさが際立っています。個人的には冒頭のホンマ~棒下ハーフ~車輪の流れが好きです。
岡選手が所属する徳洲会体操クラブの公式YouTubeでは、気軽に4K画質で体操の演技を楽しめます。ありがたいですね。

 

 

萱 和磨

セントラルスポーツ所属の27歳で、今チームのキャプテン。前回大会に引き続きオリンピックは二回目の出場。代表メンバー唯一の既婚者。

 

「失敗しない男」と称されており、某有名ドラマになぞらえてドクター萱なんて呼ばれたりしてますが、大学院を卒業して博士号を取得したことでダブルミーニングになっています。
演技後のガッツポーズに勢いがありすぎて、その様子を海外からスーパーサイヤ人と例えられたり、はたまた天然の言動も見受けられたり、キャラ渋滞感が否めません。
前回大会終了後の会見で、次の大会では英語で会見したいと目標を掲げていて、今日まで英語を勉強しているみたいなので、その努力の成果も見届けたいです。

 

とにかくミスの少ない選手で、団体戦において最も必要になってくる安定感が一番の武器。キャプテンという役割以上に、ミスの少ない演技を行うことで、チームの精神的支柱といえる立場を担っていると思います。

 

萱選手が最も得意としている種目はあん馬です。

身長に対して腕が長いこともあり、腰の高い旋回が特徴です。
前回大会からルール変更があり、その影響を受けて演技構成が結構変わったのですが、まるで長年この演技構成でやっていますと言わんばかりの圧倒的な安定感です。とても頼もしいです。

 

萱選手は平行棒も得意としています。

youtu.beこちらは昨年の世界選手権団体決勝の演技。先に紹介した岡選手がしなやかな演技だとすれば、萱選手はキレのある演技といえるでしょうか。全体的に熟練性に富んでおり、軽やかな実施が特徴です。
終末技の実施も素晴らしく着地をピタリと止めて、トップバッターとして最大の役割を果たす萱選手らしい演技です。

 

 

杉野 正尭

徳洲会体操クラブに所属する25歳で、岡選手と同じくオリンピック初出場。「正尭」と書いて「たかあき」と読みます。
三重県出身で中学卒業後、福井県鯖江高校に進学、その後鹿児島県にある鹿屋体育大学に進学した経歴を持つので、代表決定後は三重県福井県と鹿児島県それぞれから大いに祝福されていました。

 

橋本選手と同じく男三兄弟の末っ子ですが、どちらかというと求心力の高い選手で、最年長ではないにもかかわらず、所属する実業団のキャプテンに任命されています。

杉野選手の最大の魅力は声です。歴代の体操選手は声が高い人が多かったのですが、とうとう低音のイケボ体操選手が現れました。日本体操界の宝といっていいでしょう。インタビューなどで杉野選手が話している姿をお見逃しなく。

また、演技後の気迫あふれるガッツポーズも魅力のひとつで、萱選手とともにチームにパワーを与えてくれると思います。

 

杉野選手は身長170センチで、代表選手の中で最も長身です。
その長身を活かした演技が特徴で、中でもあん馬はその筆頭といえます。

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高難度技ばかりの演技構成ですが、特に注目は03:32頃から実施しているHコンバイン。H難度の旋回技で、実施するだけでもとんでもない技なのですが、なんと演技中盤の6技目に実施しています。トータルのDスコア6.9は驚異的です。
個人的には7技目に行っている安定感抜群のショーンが好きです。

 

そして杉野選手は鉄棒も注目したい種目です。

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冒頭のF難度のペガンは、世界的に見ても実施する選手をほとんど見たことがない珍しい大技ですが、難なく決めています。技を実施するときに舞うタンマがカッコいいです。
そのあとの放れ技の連続も雄大で、杉野選手が演技すると会場がとても盛り上がります。

 

 

谷川 航

セントラルスポーツ所属の28歳で、橋本選手・萱選手と同じくオリンピックは二回目の出場。年齢的には最年長にあたりますが、萱選手と同学年。
体操選手の弟がいる兄だからか知りませんが、年下が多い代表選手たちの世話焼き係になりがちな、長男力の高い選手です。

飄々とした振る舞いの印象が強いですが、とても優しい青年。
試合の何を見て優しさを感じとればいいのか、と思うかもしれませんが、画面上から勝手に漏れ伝わります。そしていつの間にか目が離せなくなってしまい、人を惹きつける独特な魅力があります。(※私見

萱選手や杉野選手のようにわかりやすく感情表現するタイプではないですが、その反面、試合で納得の演技が出せたときにあふれ出る感情表現は、胸を打つものがあります。そんな様子を見続けると、頭の中は航選手のことでいっぱいになってしまいます。(※私見

 

経験値が高いので比較的安定感がある選手でありながら、ここぞという場面での決定力と勝負強さは並外れています。得意種目で確実に決めてくれる強さがあり、萱選手と同じく、チームにいると安心感をもたらしてくれます。

 

注目したいのは跳馬

選考会のルール的に失敗が絶対に許されない場面で、最高難度の大技リ・セグァン2に挑み、さらに着地をピタリと止めています。
実施するだけでもかなり大変でハイリスクな技ですが、前回大会や2年前の世界選手権等でも同じようにこの技で着地を止めた実績があります。試合で肝となる場面で確実に決めてくる力は抜群に高いです。

 

谷川航選手はつり輪も注目です。

1技目と2技目に行なっている中水平の姿勢が力強く正確です。春先にケガをしたことで今年は特に注力している種目とのことですが、力技の実施が全体的に素晴らしいです。
終末技は腰が高い位置で着地をピタリと止めています。

 

橋本選手・萱選手・谷川航選手は前回大会に出場しており、現行ルールで行われた世界選手権を含め、多くの国際大会出場経験がある、国内選手の中でもトップクラスに経験値の高い選手です。
一方、岡選手・杉野選手は世界選手権に出場した経験がなく、この1年間FIG(国際体操連盟)主催の国際大会にも出場していません。日本男子の選手層が厚すぎることが一因なのですが、特に岡選手はシニア選手になってすぐに大ケガを負ったことで、約1年間試合に出場できなかったこともあり、国内トップ選手の中でも特に経験値の少ない選手です。

経験値が高い選手は経験を活かした試合運び、経験値の少ない選手は勢いがある演技を期待したいです。

 

所属先は偏っていますが、年齢はバラバラで比較的バランスがいい印象です。
昔と比べると近年の選手は朗らかで、所属先が異なっていてもメンバー同士の関係性はかなり良好に見えます(今までが仲が悪そうに見えていたというわけではないですが)。時代の流れなんでしょうか。
個人的には仲良くキャッキャウフフしてる姿が見られる方が、多幸感があって好ましいです。

 

 

次回は、団体戦のメンバー予想を含めた各種目の予想をしたいと思います。