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パリオリンピックで体操競技を見よう!③各種目の見どころ

前回に引き続き、パリオリンピック体操競技について紹介します。今回は各種目の見どころについて、得点の目安を含めて紹介したいと思います。なお、メダルの基準は種目別においてです。

 

 

ゆか

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ゆかはタンブリングといわれるアクロバットの技を繰り出して競う、6種目の中でも比較的メジャーな種目です。12m四方のフロアマットにはスプリングが入っており、その弾みを利用してバインバインと跳躍しています。

縦回転の宙返り、横回転のひねり技を物凄いスピードで物凄い回数やっているので、一体何をしているのかわからなくなってしまいます。
大丈夫です、わりと多くの人がそう思っています。
それどころか審判ですら何回回っているかわからなくなったりしていたらしく、それによってルール変更が行われたくらいです。専門家の目が追いつかないレベルの跳躍と考えると、改めて驚異的です。

ゆかの大きな見どころは着地です。跳躍の姿勢や高さも重要ですが、何より着地が止まるかどうか、これが得点に大きく影響します。着地が止まると見ている方も気持ちがいいので、たくさん着地が止まる演技を期待したいです。

クロバット技以外に、倒立や旋回といった技も見どころの一つ。岡慎之助選手はブレイクダンスのような開脚旋回を行っていますが、華やかかつ美しい技は必見です。

 

高難度の基準は大体Dスコア5.8以上で、6.2以上で世界トップレベルといえます。高得点の目安は14.2あたりで、メダルを獲得するには14点台後半は必要になってくると思います。

 

 

あん馬 

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あん馬って何してんの?と思われがちですが、私も未だにそう思っています。
そもそも「旋回」と呼ばれるあん馬のベースとなる動きが、人間の動きとしてどういう理屈によるものなのかよくわかりません。その割には地味な印象なので、いかんせん凄さが伝わりにくいのがもどかしい種目です。

あん馬は6種目の中で最も失敗が起きやすい種目です。いつの間にかリズムが崩れて落下、という場面はたびたび発生します。落下せず、いかにスピードを維持して最後まで乗り切るかを見守るのが醍醐味で、かなり心臓に悪い種目です。
ただここでミスなく乗り切れるかどうかが、その後の試合の展開に大きく影響する、前半の肝となる種目です。

橋本大輝選手の華やかな開脚旋回も見どころですが、画像の杉野正尭選手の手をヒラッとさせる技が通好みで、この技の良さがわかるとあん馬を見るセンスがあるといえます(※当方調べ)。

 

高難度の基準はDスコア6.0で、6.4以上が世界レベルといったところでしょうか。決定点が14.3以上くらいになると高得点といえます。ここ最近一気にレベルが上がり、メダルを獲得するには15点台前半〜半ばは確実に必要になってくると思います。

 

 

つり輪

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つり輪はあん馬と比べると、仕組みはわかるけど、絶対に出来そうにない種目といえます。男子ならではの種目で、体操選手が異様にムキムキな理由の大半は、おそらくこの種目が原因です。

一番の見どころは力技。輪と同じ高さで水平姿勢を保つ「中水平」、磔刑のような姿勢の「十字懸垂」や、腕を広げた状態で倒立する「十字倒立」などの姿勢の美しさを堪能しましょう。個人的おすすめは谷川航選手の中水平(画像の姿勢)。

選手は必死に力技を行なっていますが、必死感を出さない表現も見どころのひとつです。手や首の動きに注目するとおもしろいです。
代表選手は全員顔がいいので、つり輪で力技を決める表情にも注目です。

 

高難度の基準はDスコア5.8あたりで、6.2以上で世界トップレベルといえるでしょう。意外とEスコアが引かれやすく、14点以上で高得点といえます。決定点が大体14.8点以上でメダルレベルといえると思います。

 

 

跳馬

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跳馬は、いわば小学校の器械運動の授業で行なっていた跳び箱のような種目です。ロイター板を踏み込んで器具を飛び越えるのですが、飛び越え方が並外れています。
想像を超える速さで横にひねったり、縦に勢いよく回転したり、さらにはロンダートをしてロイター板を踏み切り、器具に対して後ろを向いた状態で跳躍したりと様々です。
そしてその桁外れの技を一瞬で行うので、一秒たりとも見逃す隙はありません。正直回転が速すぎて何をしているかわからくなったりしますが、その速さ自体も注目ポイントのひとつです。

技そのものだけでなく、ロイター板を蹴る音にも注目したいところ。特に跳馬で大技を行う選手は、ロイター板を踏み込む音の大きさ、キレや鋭さを強く感じることができます。

跳馬は他の種目に比べると着地が大変難しく、高難度の技はケガなく両足で立てれば成功みたいなところもありますが、裏を返すと着地が止まれば非常に盛り上がります。
谷川航選手は日本で一人しか実施していない最高難度の技を持っており、かつ着地を狙いにいける強さがあるので、必見です。

 

跳馬は技ひとつひとつに難度が設定されています。高難度の基準はDスコア5.6で、最高難度6.0を跳ぶ選手はバケモノです。技がひとつしかなく、Eスコアが引かれにくいこともあるので、14.7点以上で高得点といえます。15点を超えればメダルが確実といえます。(跳馬の種目別は2本の跳躍の平均点)

 

 

平行棒

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平行棒は二本の棒を利用してひねったり、棒の端に跳んだり、一本の棒で倒立したり、はたまたバーの間で宙返りをしたりと、技のバリエーションが最も豊富な種目。それゆえか平行棒が一番好きな種目という体操ファンは少なくないイメージです。ちなみに私がその一人です。

大きな見どころは倒立。技と技の間に倒立をすることが多いのですが、倒立が美しい選手は演技そのものにメリハリがあって、見応えがあることが多いです。

技ひとつひとつを丁寧に実施する選手、流れるように技と技を繋げる選手と様々ですが、自分の好みのタイプを見つけると楽しくなります。萱和磨選手のキレ味ある技捌きは、見ていて爽快なので注目したいです。

 

他の種目より高難度技の数が多いので、高難度の基準はDスコア6.2あたりで、6.5以上で世界トップレベルといったところでしょうか。比較的Eスコアが引かれにくく、14.8点以上で高得点といえます。世界的にかなりレベルが高いため、決定点15.5点以上がメダルレベルになるかと思います。

 

 

鉄棒

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男子種目の花形といわれる種目で、日本が昔から最も得意としています。一番の見どころはなんといっても放れ技。バーから手を放して飛び越えたり、回転する姿はどんな技でもカッコいいです。

放れ技をたくさんやると当然落下するリスクがあるのですが、たくさん実施するとそれだけ演技に華が出て、見ている側もテンションがあがります。ハイリスクであればあるほど、それが決まると気持ちがいいです。
日本のエース・橋本大輝選手が一番得意としている種目で、放れ技を5つ盛り込んだ高難度の演技構成は一番の注目です。

 

そしてもう一つの見どころは着地。2.8mの高さから勢いよく回転しながら技を行なって、着地がピタリと止まるととても盛り上がります。アテネ大会の「伸身の新月面が描く放物線は栄光への架け橋だ」という実況は非常に有名ですが、20年経過した今でも変わらず終末技の主流は伸身の新月面です。
団体戦や個人総合では締めの種目になるので、着地が止まって盛り上がるシーンを期待したいです。

 

高難度の基準は大体Dスコア6.0で、6.4以上で世界トップレベルといえます。14.2点以上くらいで高得点といえると思います。今年に入ったあたりから急にハイレベル化し始め、決定点15点以上でメダルレベルといえるかと思います。

 

 

 

次回、日本代表選手について紹介します。