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パリオリンピックで体操競技を見よう!②ルール


前回に引き続き、パリオリンピック体操競技について紹介します。今回は体操競技の基本的なルールについて紹介したいと思います。

 

 

ルール

「そもそも体操競技ってなんだかルールが難しくてよくわからない…」「10点満点じゃないんだっけ?」という方向けに、簡単にルールの説明をします。

まず体操競技に限らず採点競技というのは主に難度点、実施点、芸術点に区分されて採点されることが多いかと思います。

現在の男子体操においては芸術点という採点基準はなく、Dスコア(Difficulty=難度点)とEスコア(Execution=実施点)に区分されて採点され、その合計点が決定点、つまりその演技の得点になります。

 

 


Dスコア

Dスコアは難度点、要するに演技価値点を指すスコアで、技の難易度によって得点が決定します。


技はA、B、C…とアルファベット順に難度が設定されており、A難度は0.1、B難度は0.2というようにアルファベット順に0.1ずつ難度点が上がり、最高難度は種目によって違いますが、男子はI難度の0.9まで存在します。

D難度以上はすべて難しい技ですが、D難度は難しい技、E難度はとても難しい技、F難度はとても難しく中々実施できない技、G難度は非常に難しく習得すらできない技、H難度以上の技を実施する選手はバケモノ、くらいの認識でちょうどいいかと思います。(そもそもオリンピックに出ている時点で全員バケモノですが)
跳馬は一つの技で演技が終わるので、技ごとにDスコアが設定されています。

実施した演技のうち、難度が高い10技の合計がDスコアの得点に加算されます。技の難度以外に特別要求点(基礎点)や組み合わせ加点もありますが、かなりややこしい内容なので割愛。
特別要求点は、失敗がなければ基本的に2点加算されます。組み合わせ加点はゆかと鉄棒に設けられている加点で、演技構成によって異なりますが0.1~0.3くらい加点されることが多いです。

一概にはいえませんが、Dスコアが高ければ難しい技をたくさん行なっている=得意種目、あまり高くない=苦手種目となる傾向が多いです。種目によって異なりますが、オリンピック出場レベルの選手は、大体5点台後半から6点台前半くらいの点数になることが多いと思います。

 

種目ごとのDスコアの基準は、次回の記事で紹介します。

 

 

Eスコア

Eスコアは実施点、要するに演技の出来栄えの得点で、10点満点から減点方式で採点されます。

減点項目は落下や転倒はもちろん、ひじ・膝や腰の曲がり、着地で動く、跳躍の低さ等、種目や技によってありとあらゆる項目があり、技ひとつひとつに対して細かく減点されます。
ルールブックには、減点対象となる角度や大きさが具体的に明記されており、採点競技の中ではかなり明確な基準を設けている方だと思います。それゆえややこしいルールになってしまい、見ている側にわかりづらくなっているのが一番の難点。

その中で最もわかりやすい減点は落下(器具上含む)・転倒・お手つき・尻もちの”大過失”と呼ばれるミス。いずれも1点の減点です。減点自体も大きいですが、大過失を犯したことによる精神的なマイナスの方が大きく、選手としては絶対避けたい減点です。
それ以外の減点項目は0.1、0.3、0.5ずつ細かく設定されています。

 

減点項目が多いということもあり、ミスのない演技をしたとしても、跳馬以外は8点台の点数になることがほとんどです。演技を見て、美しい!キレイ!10点!と感じても8点台前半なんてことはザラです。
ただ美しいと感じたその感覚は、体操競技を見る上でとても大切なことだと思います。

選手はまず8.0点以上を目指しており、8.5点以上はほぼ完璧、9.0点以上はお化けです。跳馬は技がひとつで減点が少ないので、9点台を目標としています。

 


かねてから日本が誇っている美しい体操=Eスコアが出やすい演技ではありますが、Eスコアが高い=美しい体操とはいえないところがあります。体操のルールに詳しくなってDスコアは理解できても、Eスコアを理解するというのは大変難しいと思います。
そもそも美しい体操って何かね?って話もありますがね、余談ですが。

 

 

ペナルティ

DスコアとEスコアの合計が決定点になるのですが、それ以外にペナルティという減点が存在します。規定の演技時間オーバー、審判へのあいさつをしない等がありますが、最も頻発するペナルティが「ラインオーバー」です。

ゆかは規定のエリアから出た場合、跳馬は着地時のマットの規定ラインからはみ出すと、ラインオーバーとなり、Eスコアの減点とは別にペナルティとして減点されます。

片足で−0.1、両足で−0.3で、ゆかの場合は着地が多い種目なので、ラインオーバーが複数回発生することがありますが、その度に減点されます。ただ判断が微妙な場合は、比較的選手に有利な判定になりやすい傾向にあります。

 

 

ルールを知らなくても「なんかよくわからんけど凄い!」だけで十分楽しめますが、基本のルールを知ればより楽しめるのかなと思っております。

 

次回、各種目の見どころについて紹介します。